
昭和24年 秋
シベリア拘留者を乗せた引揚船が舞鶴港へ到着

船から見える 祖国 山河の美しい紅葉・・・
― 生きて還れた ―
極寒の地・・・シベリアより・・・

帰還から60年あまりの歳月が経ち、孫と二人で筆を持つ・・・
― 伝えたい思いとは・・・―
鎮魂 祈り 繰り返してはならない悲劇・・・
祖父・故川田一一 と 孫・千田豊実の二人展
祖父と孫の二人・・・?
今から16〜7年ほど前・・・
中学の時、絵を描くことが大好きだった千田豊実(せんだ とよみ)さんは、初めて油絵セットを購入します。その時をきっかけに、祖父の故・川田一一(かわだ かずいち)さんも一緒に油絵セットを購入したのです・・・

1925年、さぬき市で生まれた一一さんは、学校卒業後、南満州鉄道株式会社へ入社。20歳の時にソ連軍により貨車に乗せられ北へ・・・シベリアにて4年余りに渡る極寒と過酷な強制労働の抑留生活を体験しました。
70歳になり、孫と一緒に絵の具を買ったのをきっかけに、初めて絵筆を持った一一さんは、それまで家族にも話して来なかったシベリアでの体験を、キャンバスへ吐き出すように描き始めたそうです。
それは、恐ろしく暗く悲しい 永遠の闇のような世界。油絵の技術が殆ど無かった一一さんですが、1作目から、ものすごいパワーが感じられたそうです

「元気なうちに、抑留の実態を伝えなければ・・・」
「早く、自分のイメージした物をキャンバスに表せるようにしたい」
その想いに駆り立てられた一一さんは、地元の絵画教室に通いながら静物画や人物画の基礎を習い、家では、シベリア抑留の絵を描き綴っていました。
また、孫の豊実さんも、美大へと進学。卒業後 渡独し、2006年から2009年までベルリンで制作発表を行い、個展やグループ展に多数参加

ドイツに3年滞在したころ・・家族から一一さんの身体の具合が良くない事を聞き、2009年に豊実さんは帰国します。祖父、一一さんの想いを伝えるべく すぐに 二人展「記憶の調べ」を地元さぬき市で開催しました。

香川県内にも、シベリア抑留の経験がある方や関係者はたくさんいて、連絡を受ける事がある・・と豊美さんは言います
「祖父と同じ経験をした人達が 想いを共有できる場所になれれば・・・」
そして今回のテーマは【 鎮魂 】
このテーマも、一一さん・豊実さんの二人で決めました。
それまで、実際の抑留の場面を描くことが多かった一一さんですが、80歳を過ぎてからは、「一緒に還ることの出来なかった仲間の供養がしたい・・・」と絵の内容も変わってきたそうです・・。
2009年の初めての二人展から 4年・・・
3月に開かれるこの二人展と、豊実さんの出産を励みに「必ず回復する!!!」と言っていた一一さん。
2012年10月
間質性肺炎の為、逝去
「祖父を通して、こういう悲しい体験があった事を知ったし、祖父がいなければ私は居なかった。自分を知る為にも、祖父の話しを聞く事は貴重だし、今の平和のありがたさを見つめることが出来ました」

今回の作品展の為、毎日制作の最後に、一一さんをスケッチされていた豊実さん。それが、新作の「祖父と蛍」の下地になっています。
世代を超えて、伝えていきたい想い・・・
家族で・・・見て、語らって頂きたい 二人展です
【祖父・故・川田一一と孫・千田豊実の二人展】
鎮魂 〜後世へ伝える平和への祈り〜
日時: 3月5日(火)〜17日(日) ※月曜休館日
場所: さぬき市寒川町石田東甲927-2
TEL: 0879-43-0780
入場無料
※同時に、舞鶴引揚記念館が所蔵する写真パネルと遺留品の展示もあります。
さらに、3月9日(土)、10日(日)には NPO法人「舞鶴・引揚語りの会」語り部・宮本さんによる講和会も開催されます
(両日とも 10:00〜と13:00〜の2回づつ)
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