さらです。
2013年12月10日(火)〜12月22日(日)まで
さぬき市寒川町の「21世紀館さんがわ」で、
『染色工芸作家 宇佐見みわ作品展−心の旅−』
が開催されています。(入場無料)
鮮やかな色彩、繊細な模様。
一見、普通の絵画のように見えますが、
実は「ろうけつ染め」の手法で、布を一色一色染めて作られた染絵なんです!
これらの素敵な作品を作られたのが、
愛知県在住の染色工芸作家・宇佐見美和さん。
日本現代工芸美術展の入選が20回、
日展の入選が4回など、数々の実績を持ち、
現代工芸美術家協会 本会員、
NPO日本パーソナルカラー協会 認定講師としても
ご活躍されています。
今回の個展のテーマは「四国遍路」
宇佐見さんは、四国八十八ヶ所霊場の全てを徒歩で巡拝するという、
歩き遍路を達成された経験をお持ちです。
(その作品の1つである「達成の時」は、第45回日展に入選し、
現在、東京上野の国立美術館に展示されているそうです)
今回の個展では、過去の日展の入選作品を含めた染絵が41点展示されています。
個展の会場である「21世紀館さんがわ」
今回の個展で展示されている作品は、
宇佐見さんが10年をかけて制作されたもの。
会場に入って、正面から順に時計回りに作品を見ていくと、
仏教の修行を通して悟りに至るまでを表す
「発心」「修行」「菩提」「涅槃」
のような、宇佐見さんの心の変化を感じることができます。
歩き遍路をしようと思い立ち(発心)
痛む足に耐えながらひたすら歩きつづけ(修行)
それでも前に進むうちに、
再び最後まで歩き続けようと決意して(菩提)
結願寺(第88番大窪寺)に到達する(涅槃)
実際に使われた、お遍路の衣装や納経帳など。
宇佐見さんが歩いたへんろ道は、弘法大師が歩いたとされる
たいへん厳しいコースだったそうです。
険しい山道や、高知の長い海岸線をひたすら歩き、
日没後、へんろ道から離れた場所にある宿に泊まっても、
次の日は、前日歩き終えた場所から出発するという徹底ぶり。
金剛杖の持ち手のほつれが、歩き遍路の過酷さを物語っています。
もともと絵が好きで、日本画などを勉強していた宇佐見さん。
絵を描くだけでは何か物足りないと感じ始めて、
独自の表現方法を探していたときに、染色工芸に出会いました。
30年以上前のことだそうです。
宇佐見さん「うちの実家が畳屋で、父が畳職人をしていました。
今思うと、そういうところから工芸というものに、すごく惹かれたのかも」
染絵には、単に絵を描くのとは違う「ものを作る喜び」があるのだそうです。
作品を制作するには、まず、スケッチを描きます。
そこで、どんな絵にするのか、どんな色にするのかを決めるそうです。
そして、色が決まったところで、染料を混ぜて色を作ります。
例えばピンク色だけでも、たくさんの種類がありますよね?
納得がいく色が出せるまで、何度も布を染めて試すのだそうです。
布に筆で蝋(ろう)を塗って模様を描きます。
これは下書きはせず、フリーハンドで描かれるそうです。
つぎは染料を刷毛で塗ります。
一度染めてしまうと直すことができないので、失敗が許されません。
染まった後は、色止め液につけます。
その後、蝋などを洗い流して、乾燥させます。
これらの手順を、色の数だけ繰り返し、
薄い色から濃い色へ染めていくのだそうです。
乾燥させなければならないので、1色に3日はかかります。
スケッチや色実験を含めると、1つの作品に1年近くかかったものもあるそうです。
宇佐見さん「さぬき市は、四国八十八ヶ所霊場の最後の3カ寺、
第86番、第87番、第88番のある場所。こんなに素晴らしい場所で、
お遍路を題材にした作品の個展を催すことができてすごく嬉しいです」
私も会場で、宇佐見さんの作品を見せていただいて、
細かい模様や色彩の豊かさに感動しました。
そして、会場の作品を順番に見ていると、あたかも自分が遍路を経験しているような、不思議な気持ちになりました。
14日(土)、22日(日)には、宇佐見さんが会場にいらっしゃるそうです。
皆さまも是非、会場に足を運んでみてくださいね。