先週末まで金丸座で上演されていた「春のこんぴら歌舞伎大芝居」
第1部に『福内鬼外作 神霊矢口渡(ふくちきがい さく/しんれいやぐちのわたし)』という演目があります。
ユニークな作家名「福内鬼外」福は内…鬼は外…??
実はさぬき市志度生まれの奇才、平賀源内が戯曲を書くときに使っていたペンネームが「福内鬼外」なんです!
今年のこんぴら歌舞伎で源内の書いた「神霊矢口渡」が上演されたのに合わせて
さぬき市志度の平賀源内記念館で
「神霊矢口渡」コーナーが開設されています。
今回のこんぴら歌舞伎でも見ることが出来なかった「神霊矢口渡」の全体像、
源内らしさを探しに、平賀源内記念館へ行ってきました♪
さぬき市志度、さぬき市役所のほど近くにある「平賀源内記念館」は、志度出身の源内にまつわる様々な展示が行われています。
エレキテルの模型もあって、源内の作り上げてきたものを間近に楽しむことが出来る施設。
エレキテルの復元や「本日土用丑の日」などのコピーライターとして知られる平賀源内ですが
戯曲の文筆活動なども行っていました。
その中にも「神霊矢口渡」の展示がありますが…
この春のこんぴら歌舞伎で、福内鬼外(平賀源内)作「神霊矢口渡」が上演されたことを受けて、「神霊矢口渡」をじっくり解説する特設コーナーが登場しました。
「神霊矢口渡」はもともと浄瑠璃の作品で、1770年に初めて江戸で上演されました。
歌舞伎として上演されたのは1794年(寛政6年)頃からで、それ以降300回あまりもの上演が行われてきたと記録が残っています。
2015年には東京、国立劇場で中村吉右衛門が出演しての「神霊矢口渡」が上演(写真左ポスター)
文楽、全国各地の農村歌舞伎でも演じられている、意外にメジャーな作品なんです。
こちらが「神霊矢口渡」脚本の原本。
平賀源内記念館には2冊ありますが、稽古で使い倒すために紙がボロボロのものも!
物語のはじめには中国や朝鮮の古文書のような言い回しが書かれていますが、これは源内ならではの見せ方。
海外の文献などを読み解き、研究した源内だからこその構成。
文中の「ヲロシ」「ハル」など、浄瑠璃の合図となる節回しも書かれていますが、こちらは三味線、義太夫、演者の三者のルールを把握している座元さんと一緒に仕上げたようです。
原作は全5段で構成され、通しで上演すると3時間以上かかると言われている「神霊矢口渡」
現代になり「4段目 中 頓兵衛住家の段(とんべえすみかのだん)」以降が上演されることが多くなりました。
初めて見る方は、いきなりクライマックス!な場面や、どこからとも無く飛んで来る矢に「???」となることも。
そんな疑問を解消するため、初段から「神霊矢口渡」を読み解こう!というのが今回の企画展なのです♪
企画展では初段から5段目までの解説が添えられているほか、登場人物の相関図や浮世絵もあり、非常にわかりやすくなっています(日本史が苦手な私もなんとか…)
1770年に書かれた1300年台の南北朝時代、新田家と足利の争いのお話。
策略、恋、金銭、侍のプライドが人の関係性を動かしていきます。
この頃、歌舞伎は大阪でブームになっていて、徐々に江戸に下っていきますが、大阪の話が多いため江戸っ子にはいまいちウケない…
そこで、江戸を舞台にした物語を書いたのが平賀源内!
江戸弁を散りばめ、がっちりと江戸っ子の心を掴んだ作品とも言われています。
物語の重要なシーンである2段目の浮世絵。
矢口渡の渡守である強欲な頓兵衛が、お金欲しさに新田善興を策略に陥れる手伝いをします。
頓兵衛が貸した船に穴が開いているとは知らずに漕ぎだす善興。
水が入って沈んでいく中、両脇から攻められて、結果自害してしまうという場面です。
褒美に大金を手に入れて新しい住み家を建てた頓兵衛ですが、そこに兄の善興を殺された新田義岑と、恋人のうてながやってくるところからが現代の上演箇所。春のこんぴら歌舞伎でも、ここからが上演されました。
その後は頓兵衛の娘、お舟の義岑への恋心も絡まり、非常に激しいクライマックスへと進んでいきます。
なんでこんなに頓兵衛って強欲なんだろか…と怒りを通り越して呆れた頃にやってくるのが…
頓兵衛に騙されて亡くなった新田善興の亡霊。
ズバーっと矢で頓兵衛の首元を打ちぬきます。
なぜか頓兵衛がどこからともなく飛んできた矢に倒されてスッキリ♪ の理由はこういうことでした〜♪
ちなみにこの矢は、その時代の天皇からしか頂くことができない「水波兵破の矢」
新田家の初代がこの矢を夢で貰い受けたという宝物です。
なぜこれを善興の亡霊が持って出てきたのかは物語の不思議なところですが、
実際に新田善興のたたりを恐れて作られた「新田神社」では、「矢守」という矢のお守りが販売されています。
なので矢にぶら下がる旗も、新田の旗。これが「破魔矢」の大もととなったとも言われています。
さらに商売上手な平賀源内は「新田神社の竹やぶの竹で、矢のお守りを作って売ればいい!」とアドバイス。
しばらく竹製の矢守が販売されたそう(笑)
浄瑠璃作品を書き上げると同時に、プロデューサーとしての力も発揮した平賀源内。
当時、閑散としていた新田神社にも「神霊矢口渡」のおかげで人が集まり、神社自体が復興したそうですから、本当に頭の良い方だなと思いました。
なぜ平賀源内は「神霊矢口渡」を書いたのか?
平賀源内は福内鬼外の名前で生涯9つの浄瑠璃脚本を書き上げました。
そのきっかけは「浄瑠璃」座元からの脚本依頼。
当時、庶民の文化「浄瑠璃」は人気がペースダウンしていたため、ベストセラー「根無し草」を書いた平賀源内に脚本を頼めば、再びブームが起きるのでは?と考えられたそう。
実際に福内鬼外の作品が非常にうけて、浄瑠璃が復興したと言われています。
東京には「矢口渡駅」や「新田神社」が実際にあり、矢守も販売されています。
この企画展で興味を持った方は、東京で「神霊矢口渡」めぐりもしてみてくださいね♪
(平賀源内記念館 砂山館長)
「水にさらすと文字が浮き出る密書や、本草学(薬草)の名前など、平賀源内ならではのアイデアもつめ込まれた素晴らしい作品です。企画展でじっくり読み解いてみてくださいね」
「神霊矢口渡」特別展示コーナーは、平賀源内記念館内にあります。
ぜひ源内のいろんな知識、文献なども同時に楽しんでみてくださいね♪
【平賀源内記念館】
香川県さぬき市志度587番地1 【地図】
開館時間/9:00〜17:00
休館日/月曜日(祝日、振替休日の場合はその翌日)、年末年始
入館料/一般 500円、大学高校生 400円、小中学生 250円
TEL:087-894-1684
香川県さぬき市志度587番地1 【地図】
開館時間/9:00〜17:00
休館日/月曜日(祝日、振替休日の場合はその翌日)、年末年始
入館料/一般 500円、大学高校生 400円、小中学生 250円
TEL:087-894-1684
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