江戸時代から続く伝統芸能の日本舞踊。
その作品に「志度寺」に残る伝説「海女の玉取り物語」があるのをご存知ですか?
だれよりもこの作品に想い入れがある香川出身の日本舞踊家
吉村流 吉村ゆきそのさんの写真展に行ってみると
かつて志度寺で奉納された「珠取海女」の写真に出会うことが出来ました。
7月11日(水)開催の「讃岐ゆかりの作品集をつづる@高松テルサ」では
「珠取海女」の舞の映像を実際に見ることが出来るそう!
吉村ゆきそのさんに詳しくお話をお聞きしてきました!
吉村ゆきそのさんは香川県高松市生まれ。
日本舞踊、上方舞のひとつ「吉村流」の代表的な舞踊家。
3歳から舞踊を習い始めますが、
18歳で高松を出て上方舞4大流派の一つ「吉村流」に入門。
人間国宝であり、吉村流四世家元の吉村雄輝氏の薫陶を受け、
1957年には「吉村雄輝園(ゆきその)」の名を許され、
以来、吉村流の代表的な舞手となりました。
吉村流ならではの、能、歌舞伎などの技法を大胆に取り入れた
1998年には天皇皇后両陛下 御成婚40周年、
天皇陛下御即位10周年のお祝いの席で舞われたり、
東大寺、金刀比羅宮、善通寺などの祝賀法要で奉納舞を披露しています。
また、日本の伝統文化を後世につなげるため、
地元の讃岐にまつわる能楽・地唄「八島」を屋島小学校のこどもたちに指導されたことも。
2016年には舞手として区切りをと、金沢での「珠取海女」公演にて舞手を終えました。
写真展ではこれまでのゆきそのさんの舞の様子や著書からの言葉、
様々な扇子のコレクションも並びます。
(写真:明治神宮会館で「珠取海女」を舞うゆきそのさん)
さて、展示写真の中に、ゆきそのさんとさぬき市の関わりを2つ発見しました。
まず一つ目は志度寺に残る伝説「海女の玉取り物語」の舞となる「珠取海女(たまとりあま)」
「海女の玉取り物語」は志度寺に残る悲恋の伝説。
藤原鎌足の子 藤原不比等が唐土から贈られた宝物を持ち帰る途中、
志度の浦で宝珠を龍神に盗られてしまいます。
それを取り戻すため不比等は志度の地に身分を隠し止まりますが
漁師の娘 海女と恋仲になり、子供(藤原房前)を授かります。
不比等がある時、龍神に盗られた宝珠のことを伝えると、
もし宝珠を取り戻すことができたら、房前を正式な跡取りにしてほしいと
海女は海へ飛び込み、命と引き換えに宝珠を持ち帰ります。
能の「珠取海女」では、その後のストーリーが描かれていて、
藤原家を継いだ藤原房前が幼少の頃無くした母を弔うために志度に訪れます。
一人の海女に出会い、母が龍神に奪われた珠を取り返したことなどを
改めて知るという流れになっています。

(吉村ゆきそのさん)
「18歳の時、東京に出て吉村流に入門し、
この作品を知った時は本当にびっくりしたものです。
能楽の古典作品に地名が出ることはほとんどないのに、
この作品だけには「志度寺の観音さん」といったくだりが出て来ます。
また「八島(やしま)」という作品にも「高松の浦風なりけり」と、
地元の地名がちゃんと出ているんです。
自分が生まれた場所「讃岐」は文化圏であると思い知らされたのです。
テープを引っ張りながら連絡船で飛び出して来た香川が
そんなにいいところだったのかと。
ならばなにがなんでも「珠取海女」をマスターしなくちゃ!となったんですが
「30年くらいしないと教えられるものではない」と言われてしまい…
そんな大事なものならと、一生懸命やって、
やっとの思いで許しをもらいました。
大切にしながらこれまでに100回は舞っている作品です。
2年前にそろそろ舞の人生にピリオドを打とうと思った時に
納得しながら選んだ最後の舞も「珠取海女」なんですよ」
実際に「珠取海女」を物語の舞台「志度寺」で奉納することも過去にありました。
そのきっかけは志度寺に五重塔が落慶したとき。
五重塔は坂出出身の実業家 竹野二郎氏が大阪に方向に行くとき、
志度寺の前住職が支援を行ってくれたことのお礼にと寄進されたもの。
1975年の落慶時にはゆきそのさんが祝賀舞を奉納されました。
ちょうどその頃、志度寺では毎年4月、9月、11月の16日に
「十六度市」という市が開催されていました。
その時にも書院に舞台を組んで、ゆきそのさんが「珠取海女」を披露されたのだとか。
何度も訪れたことのある志度寺の五重塔と書院で過去にそんな風景が見られたとは!!
改めて志度寺を訪れて、その様子を思い浮かべてみようと思うのでした。
また、さぬき市音楽ホールで行われた「吉村ゆきその舞の会」のお写真もありました。
ちょうどさぬき市ができた年に行われ、
「水映」と題し、バレエでもおなじみの「ボレロ」の曲に乗せた舞や
さぬき市5町の名前を入れ込んだ謡曲を作り、舞を披露したのだとか!
(吉村ゆきそのさん)
「私はお遍路も何度も回っているんですが、
このさぬき市が遍路の最終地になるので、ここでお土産をたくさん買ってほしいなと思いますし
最後の打ち上げを盛大にしてもらえる企画を町の皆さんと組んでやってみたいですね。
5町全部歌いこんだ曲もまたどこかで流して、町おこしをしてみたいです」
現在は高松市の観光大使にもなられているゆきそのさんですが、
大きく舞で関わった善通寺と志度寺に関してはもっとみなさんに知ってもらいたいとのこと。
日本舞踊で地域が元気になる、そんな現象をぜひ見てみたいと思いました!

2018年7月11日(水)高松テルサでの映像と語りのイベント
「讃岐ゆかりの作品集をつづる」にて
志度寺、サンポートホールでの「珠取海女」の舞が上映されます!
映像前後ではその時の思いを語ってくださるのでお聞き逃しなく!
志度寺での舞は午前中の予定ですが
この日は10:00〜20:00まで一日中ゆきそのさんの舞が楽しめ、どの時間でも入退場可能。
休憩を挟んで楽しまれる方には軽食とお抹茶も出るとのこと♪
せっかくのチャンス、吉村ゆきそのさんの世界にたっぷりと浸ってみてくださいね♪
【讃岐ゆかりの作品集をつづく】
日時/2018年7月11日(水)10:00〜20:00
場所/高松テルサ 音楽ホール【地図】
料金/2000円(高松テルサにて販売中)
出演/吉村ゆきその
プログラム/
10:00〜 善通寺千三百年記念の舞・志度寺NHK芸能花舞台「珠取海女」など
12:00〜 休憩(1時間)
13:00〜 金毘羅宮・百二十年大遷座祭に春の海を舞うなど
15:00〜 休憩(1時間)
16:00〜 料亭「二蝶」にて舞う・NHK芸能花舞台八島を舞うなど
12:00〜 休憩(1時間)
13:00〜 金毘羅宮・百二十年大遷座祭に春の海を舞うなど
15:00〜 休憩(1時間)
16:00〜 料亭「二蝶」にて舞う・NHK芸能花舞台八島を舞うなど
18:00〜 休憩(1時間)
19:00〜 中尊寺能舞台にて義経命日に八島と春の海を舞うなど
(どの時間帯でもご参加いただけます)
19:00〜 中尊寺能舞台にて義経命日に八島と春の海を舞うなど
(どの時間帯でもご参加いただけます)
お問合せ先/087-844-3511(高松テルサ)