文理大学の学生が地元企業について知る貴重な機会にもなっているそう。
今年のテーマは「バイオ・医療」
理工学部、薬学部のある徳島文理大学ならではのテーマですが、まずはいろんな方面からの取り組みを知ることができる講演会からスタート。
まずは日立製作所 研究開発グループ チーフサイエンティストの坂入実さんによる医療現場での研究発表。
「尿中腫瘍マーカーによる癌検査の可能性に関する研究」
尿の中にある代謝物は健康状態によって左右されるため、それを徹底的に解析すれば尿でも癌検査ができるのではないかという仮説からはじまったもの。
尿検査での分析技術の研究を担当された坂入さん。
代謝物には数千種類もの数があるため、それを解析するために多様な技術が必要となったと発表。
今回の研究は新しい観点での検査となり、「悪性、良性、該当なし」という判断ができるため、グレーゾーンのままでの治療実行が少なくなるという可能性があります。
会場では小児がん患者の例を中心に発表が行われました。
注射針を刺す血液検査は子どもにとっては恐怖。
もし尿検査で癌検査ができるようになれば、患者であるお子さんや家族にとっても負担が少なくなるという未来が待っています。
今後は乳がん、大腸がんなど大人の癌についての結果もでてくるようですが、検査の時間を面倒と思う人が尿検査なら手軽になるため、受ける人が多くなるのではと考えられています。
早期発見ができるツールが増えることで、2人に1人が癌になる時代でも多くの方が社会活動できる時間が増えて社会システムを改善できるとお話されていました。
実用化するために、今後さらなる臨床データの積み上げが必要とのことでしたが、身近な医療機関でも広く使われるようになる日が早く訪れて欲しいと思う講演会でした。
続いては地元さぬき市鴨庄漁協の取り組み「海苔の養殖」についての講演会。
鴨庄漁業協同組合の松中さんがお話しされました。
毎年この時期に「海苔」を養殖している鴨庄漁協ですが、平成20年の冬場くらいから不調、不作が続いているそう。
その理由は雨が降らないことにより、山から栄養分のある水が養殖場である湾に流れ込まなくなったこと。
結果、海苔の色落ちなどの症状が現れているのだとか。
近年では沿岸の磯焼けにより海藻が育たず、それをエサにするカモや魚が海苔を食べてしまい、海苔の収量にも問題が出てきているそう。
音の鳴る機械を生簀に設置して魚を追い払ったり、栄養分のある水を排水して海を豊かにする努力をしてみたものの、温暖化という大きな問題が海苔の色落ちを進めるため、まだまだ対策は必要になっているとお話しされていました。
そこで鴨庄漁協が新たに取り組み始めたのが「わかめ」「青のり」
特に青のり。
2〜4月になると鴨部川は川が真緑色になるほどアオサが生えることから、鴨庄漁協での青のりへの挑戦がスタート。
中でも兵庫県からアドバイスをもらい育て始めた「スジアオノリ」は鴨庄の海と相性が良く、1年目で380kgも収穫ができたそう。
そして今年度は3件の業者で5600kgを生産し、6500万円の収益にすることができたのだとか!
今年は黒海苔が食害で伸び悩んだだけに、嬉しい出来事となりました。
今後、ゴールデンウィーク頃には乾燥したスジアオノリが出荷されるとのことで、また取材に行きたいなと思っています!
最後の講演会は徳島文理大学理工学部の梶山教授によるもの。
「光合成光利用効率に基づいた植物生育促進技術の提案」
梶山教授はトマトの収穫量を2倍にできるLEDライトを開発されたこの分野の達人。
お天気が曇りの日の光指数を「1000」として、その「100万分の1」という少ない光でいかに野菜を栽培するという研究です。
レタス、トマト、スジアオノリ、徳島の藍などに光を当てて育ててみた結果が発表されました。
太陽光と比べた場合の野菜の成長比較も面白く、レタスは太陽光だけだと根元が細くて縦に長く育りますが、パルス光と呼ぶ光合成光を当てると葉がより広くて横に大きくふさふさと育っていました。
スジアオノリは10日光を当て続けることで2倍に成長、藍も1.8倍の収穫量を得ることができたそう。
この光を利用することで栽培期間が短くなる分、コストが下がり、安くて美味しいものを食卓に届けることができるということ。
光合成を行うものすべてに応用できる技術ということで、今後もどんなふうに広がるのか、とても楽しみです。
さて、講演会と研究発表が終了した後、徳島文理大学の学生によるプレゼンテーションがスタート。
1分で研究のプレゼンを行い、のちに企業による投票が行われます。
うーん、志度で大学生たちがこんな難しい研究をしているのか…と、ただただ感動。
プレゼンが終われば各パネル前で対応し、研究についての交流会が行われていました。
また、会場では地元企業によるパネル展示、交流ブースも設けられていました。
大学というと閉じられた研究空間というイメージもありますが、このように交流会を設けてオープンにすることで地元への還元、学生の未来をつなぐことが可能に。
素晴らしい試みだなと感じました。
徳島文理大学では毎年この交流会を開催していますので、興味のある方は来年足を運んでみてくださいね!
また、科学や実験、工作に興味のある子どもたちに楽しんでもらえるイベント「さぬきっ子サイエンスフェスティバル」も2月23日(日)に開催されます!
詳しくはこちらをチェック!→みんなで科学体験!2月23日「さぬきっ子サイエンスフェスティバル」開催@志度
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