新時代「令和」の幕開け、2019年5月1日。
新年を迎えるかのような喜びが日本国内に広がっていますが、
実際に元号の典拠となった『万葉集』に触れて、新時代に託された美しい日本の姿を想像してみませんか?
「徳島文理大学 香川キャンパス(志度)」の附属図書館では、2019年8月9日まで
「令和」の典拠、『万葉集』特別展示が開催されています。
『万葉集』と聞いて、古典が苦手な私は尻込みしていましたが、
文理大学の「古典と万葉集の達人」である下田教授に手ほどきいただき
非常にわかりやすく展示の楽しみ方を教えていただきました!
新元号「令和」を読み解く「令和」の典拠 『万葉集』の特別展示が行われている
さぬき市志度、天野峠麓の「徳島文理大学 香川キャンパス」にやってきました!
いつも学園祭「杏樹祭」や、「平賀源内先生こども科学教室」でお邪魔している校舎ですが、今日足を運ぶのはこちらの「附属図書館」
学生はもちろん、学外の方(貸し出しは不可)も利用することができるんです。
図書館入ってすぐのところにある「創立110周年記念館」で展示は行われています。
1895年、村崎サイ氏により創立された徳島文理大学。
これまでの大学の歴史が一目でわかるお部屋です。
部屋の一角にあるガラスケースの中で「令和」の典拠 『万葉集』の特別展示が行われています。
古書が3種類並んでいますが、どれも「万葉集」のよう。
どんな違いがあるのか、一目ではわかりません。
そこでお越しいただいたのが、古典の達人、
徳島文理大学文学部 日本文学科の下田祐輔教授です!!
(徳島文理大学 下田教授)
「今回の特別展示では、本学にある資料を展示しています。
現代では活字で読めるようになった『万葉集』ですが、新元号に典拠されたことをきっかけに、あえてこちらの資料をご覧いただき、新時代に想いを馳せてもらえたらと思っています。」
こちらに展示されているのは、原本かと思ったら…実は江戸時代に作られた版本(木版刷りの本)
日本の古典は手で書き写して後世に伝えられていますが、現代に残っているのはどんなに古くても平安時代以降のもの。
なので、奈良時代〜平安時代に完成した『万葉集』の原本は現代にはなく、江戸になり、木版刷りの技術が登場して多数製本された「版本」が残っているのだそう。
(写真:版本は平積み保管なので、どの角度からみてもタイトルがわかるように小口書きがなされています)
『万葉集』の版本3種を見比べてみよう。
特別展示スペースには『万葉集』の版本3種が展示されています。
・『万葉和歌集 校異』 橘経亮校訂・藤原以文再校 文化2(1805)年初刊 20巻20冊
江戸時代後期に出版された版本で、京都の国学者が書いたもの。
当時一番ポピュラーな『万葉集』で、当時の人がよく利用していたそう。
・『万葉集略解』 橘千蔭著 寛政8〜文化9(1812)年初刊 20巻30冊
上の本と同時期に出版されたものだが、江戸時代中期の国学者 賀茂真淵の弟子の一人 橘千蔭が書いたもの。
大きい字が本文、小さい字で注釈。
『万葉集』の読者に向け、江戸時代の国学の成果を広く提供するためのもので、
20巻全てに注釈をつけているので、全30冊になっています。
上の2冊は同じ頃に出版されたもので、これによって万葉集の理解が非常に進んだと言われています。
・『万葉集』 西本願寺旧蔵本(複製)書写年時 鎌倉時代後期(現存する最古の完本写本)
そういえば、本に後からカタカナが書き加えられているのはなぜなんでしょう?
(徳島文理大学 下田教授)
「『万葉集』が生まれた時代にひらがな・カタカナは存在せず、本文は漢字のみで書かれました。
さらに手書きで伝えられてきたものなので、写本によっては写し間違いや漢字の違いもあり
その読み方を明らかにするのが、万葉集研究の重要なポイントでした。
『万葉集』は鎌倉時代に全てが読み解けたと言われていますが、それも人によって解釈が違います。
書き手が研究追求し、最も妥当だと思った読み方がそれぞれの版本に生かされているんですが、
結果、いろんな伝本の違いを突き合わせて情報を盛り込んだのが『万葉和歌集 校異』なんです。」
そんな『万葉和歌集 校異』には、カナとは別に同時に赤いスミで文字入れされていました。
この本を所持していた人が『万葉集略解』(2番目にご紹介した本)の注釈を見て書き写したと思われるもの。
持ち主が2冊を読み比べて、万葉集を読み解こうとした姿勢が非常にわかります。
文学にひたむきに向き合う昔の方々の姿勢が見える『万葉集』の世界。
全ての答えが瞬時に出てくる今の時代こそ、見習いたいものだなと思いました。
本題である「令和」の引用部分に注目!
それでは「令和」の引用部分にもフォーカス!
ガラスケースの中には新元号に引用された「梅花の歌」の部分が見開き展示されています。
(徳島文理大学 下田教授)
「新しい元号の『令和』は、『万葉集』の第5巻、梅花の歌から引用されています。
本文である歌に行く前の情景説明の部分。つまり序文から使われているんです。」
「天平2年2月13日、早春、梅の花がだいぶ咲いてくる頃。歌人の家に集い、梅見の会が開かれたときの様子です。
「令和」の「令」には「良い」という意味があり、2月13日頃ならば満月に近い立派な月が望めたはず。
つまり、「令月」=「今夜は良い月だ」と解釈できます。
それに続く「氣淑」は「空気も良い」、「風和」は「風も良い」と読み、
「早春の梅見の会、今日は月も良く、空気も風も良い」という心地よさが伝わってくる情景描写です。
「令和」が生まれた序文は、
「平和で気持ちの良い1日だ。さあみんなで梅の歌を詠おう」
という情景が浮かび上がる箇所なのです。」
古典に深く触れている下田先生。
新元号が『万葉集』から誕生したことについて、どう思われたのでしょう?
(徳島文理大学 下田教授)
「まさか『万葉集』からとは、思いがけないことでした。
しかし、気持ちの良い春の梅の宴から引用され、そんな風景が見られる新時代になれたら良いなと思いました」
柔らかく、非常に分かりやすい言葉でご説明くださる下田先生のおかげで、古典嫌いな私も春の宴のように楽しく万葉集を眺めることができました。
展示室は連休中は閉館していますが、展示自体は8月9日まで続きます。
ぜひ学外からも足を運んで特別展示をご覧になってみてくださいね。
ちなみに附属図書館3階には、様々な「万葉集」もラインナップ。
興味を持たれた方は、お好きなものを手にとってみてくださいね!
「令和」の典拠 『万葉集』特別展示
開催期間/2019年4月15日(月)〜8月9日(土)
入室可能時間/月〜金9:30〜17:00、土9:30〜13:00
場所/徳島文理大学香川キャンパス 附属図書館1階 創立110周年記念室
入場料/無料
お問い合わせ先/087-899-7100(代表)
【徳島文理大学香川キャンパス関連記事】
- 「第14回 徳島文理大学理工学部 地域交流会」に行ってきました@志度
- みんなで科学体験!2月23日「さぬきっ子サイエンスフェスティバル」開催@志度
- 徳島文理大学香川キャンパスのイルミネーションがスタート!@志度
- 10月13日、14日は「杏樹祭」へGO!!!@志度
- 歓声も水も飛び交う「平賀源内先生こども科学教室」ペットボトルロケットの巻@志度