さぬき市志度にある四国霊場八十八箇所 八十六番札所「志度寺」
お寺にちなんだ絵巻で重要文化財である「志度寺縁起絵」が久方ぶりの修理を終え、香川県に帰ってきました。
それを記念しての企画展
「重要文化財『志度寺縁起絵』
〜描かれた海辺の情景 祈りの物語〜」が、
2019年5月26日(日)まで「香川県立ミュージアム」にて開催されています。
現存する全6幅の縁起絵が一同に揃うのは非常に珍しいこと!
さらに全ての縁起絵を読み取ることで、かつての「志度寺」の存在がよくわかります!
「香川県立ミュージアム」学芸員の上野さんに解説いただきつつ、楽しんできました。
さぬき市志度、志度駅から歩いて15分ほどのところにある「志度寺」は、四国遍路の八十六番札所。
開創は推古天皇の頃、西暦にして625年。
海から流れついた霊木を刻んだと言い伝えられる十一面観音像が御本尊であり、かつては「死渡道場(しどどうじょう)」と名付けられていました。
「生」と「死」の2つの世界が存在する「志度寺」には、閻魔堂や奪衣婆堂といった「地獄」を思わせる見所も境内に存在します。
そんな「志度寺」には多くの重要文化財が残っていて、
中でも鎌倉時代〜南北朝時代に描かれた「志度寺縁起絵」は、
「志度寺」の建立、再興の経緯、御本尊である十一面観音の由来などを描いたものであり、
中世の縁起絵巻として非常に大切な文化財。
原本はつい最近、軸木や裏打ち紙の貼り替えなどの本格的な修理が終了したばかり!
それを記念しての特別企画展
「重要文化財『志度寺縁起絵』〜描かれた海辺の情景 祈りの物語〜」が、
2019年5月26日(日)まで「香川県立ミュージアム」で開催されています。
実際に「香川県立ミュージアム」まで行って「志度寺縁起絵」をじっくり眺めてきました!
解説してくださるのは、香川県立ミュージアム 専門学芸員の上野さんです。

(香川県立ミュージアム学芸員 上野さん)
「まずは現存する『志度寺縁起絵』6幅全てを一度に見られるのが非常に貴重です。
縁起絵は全7幅あると言われているうちの6幅が見つかっており、うち2幅は東京国立博物館に、4幅は香川県立ミュージアムに保管。
原本を全て見られるのはこの期間中だけなんです。」
ずらりと展示室に並んだ絵巻は圧巻!
これだけのものが、ほぼ全幅残っている絵巻は他にない!という意味で重要文化財になっているのだそう。
別にある文書をもとに絵巻に描かれているのですが、よくぞ1つの絵巻に全てを描ききったなあという壮大さと細かさ。
しかし、誰が描いたのか、どの絵がどのシーンなのか、はっきりと解明されていないことも多く、まだまだ謎の文化財なのだとか!
では「志度寺」に残る伝説「海女の玉取り」を描いたと言われる第二幅、第三幅にご対面!
文庫本になるほど長く奥深い話なのですが、この2つの絵巻に全てのシーンが描かれているんです!
第二幅は「海女の玉取り」前半。
藤原鎌足邸の風景から始まり、鎌足の妹が唐にお嫁に行くシーン、唐から船で藤原家に送られてきた宝の珠が、志度湾沖で龍神に奪われるシーンが描かれています。
第三幅は後半のストーリーで、奈良の都で「龍神に盗られた珠どうする?」みたいな話し合いのシーンからスタート。
藤原不比等が志度へ出向くと決意し、その間に出会った海女と3年ほど暮らしているシーン、
海女との子供が生まれるシーン、
そんな海女が身を呈して海底の龍神に逢いに行き、手足を食いちぎられて真珠島にたどり着いたシーン、
海女を供養するために志度寺を建立し、その記念に奉納能が行われているシーン、
大きくなった不比等と海女の子供 房前(ふさざき)が志度寺を改めて訪れた時に母の声を聞くシーン…
第三幅は衝撃的なシーンが1枚の絵巻に詰め込まれていて、何度見ても悲しさがこみ上げてきます。
驚いたのは物語の進み方が絵巻ごとにバラバラということ。
前半の第二幅は下から上へ、第三幅はぐるぐると絵巻上を回って物語が進むので、絵解きが本当に難しい!!
でも今回の企画展では、絵巻の前に絵解き解説があるので、よくわかります。
(写真:志度寺縁起絵第七幅。わかりやすく物語の進行に沿って白い矢印を書いてみました)
(絵巻に描かれる閻魔)
他の絵巻以外も眺めてみると、いずれの絵巻にも描かれた共通のシーンが見えてきます。
それが、
『死んだのちに閻魔様に会い、生き返って「志度寺」を修造せよと言われる』こと。
なので、どの絵巻に「志度寺」と閻魔様が住む「閻魔堂(地獄)」が描かれています。
(香川県立ミュージアム 上野さん)
「閻魔にとって『志度寺』が氏寺なので、志度寺の縁起絵に閻魔が描かれているのだと思います。
絵巻に出てくるほかのお寺も閻魔信仰が強い場所ですね。」
そして中世に描かれた「志度寺」は非常に立派なお寺!
いずれにも数多くのお堂や能舞台、三重塔が敷地にありました。
「志度寺」は当時の人たちにとって非常に大切であり、多くの方が「死後の世界」への不安、信仰心を寄せていた場所だったのだなと感じます。
「海女の玉取り」以外の物語も非常にファンタジックで面白く、上野さんの解説に夢中になりました♪

(縁起絵修理の過程)
さて、縁起絵以外の今回の必見ポイントも教えてもらいました。
(香川県立ミュージアム 上野さん)
「絹に描かれたこの絵巻を裏紙ごと修復し、表面もクリーニングしたことによって汚れが取れて、見えやすくなったと思います。
絵巻の裏に当てていた肌裏紙を新しく張り替えたことで、明るくなった場面もあります。」
「また、赤外線で撮影したことにより、短冊形の目印がついていることと、その中に地名や橋の名前が書かれていること、下書きがされていたことが初めてわかりました。」
ほかにも1343年に取り替えた際の旧軸金具や、縁起絵の絵解き台本となる付属文書など、ここでしか見ることのできない文化財も展示されていますので、隅々まで「志度寺縁起絵」を見て楽しむことができますよ♪

・ミュージアムトーク開催
わかりやすい解説をしてくださる学芸員 上野さんからお話を聞きたい方は、
5月18日(土)13:30〜会場内で開催のミュージアムトークへ!
・「志度寺縁起絵」と「縁起文」の解説書が発行!
5月10日「志度寺縁起絵」の研究をされている太田昌子さんが書かれた本「志度寺縁起絵〜瀬戸内の寺を巡る愛と死と信仰と〜」が発売されました。
こちらを読むと、より深い「志度寺」の歴史が見えてきます!
・志度寺&県立ミュージアムでスタンプラリー開催中
「志度寺縁起絵」の特別展を記念して、志度寺と県立ミュージアム2箇所にいき、スタンプを押すと、記念品がもらえます♪
(記念品は志度寺でお渡し)
いつもとは違った目線で「志度寺」を知ることができる記念公開。
「縁起絵」を見た後は、実際に「志度寺」敷地内の閻魔堂や海女の墓、志度寺近くにある「真珠島」にも足を運んでみてはいかがでしょうか?
【はみだし県立ミュージアム】
ミュージアムショップには「志度寺縁起絵」のポストカードも販売されていました!
なかなかマニアックな、絵巻を巻き取った全貌もハガキになっています〜〜!!
「志度寺縁起絵」ファンの方は必見ですよ!!
「重要文化財『志度寺縁起絵』〜描かれた海辺の情景 祈りの物語〜」
開催期間/2019年4月26日(金)〜2019年5月26日(日)
場所/香川県立ミュージアム 2階常設展示室1
開館時間/9:00〜17:00
休館日/毎週月曜
観覧料/一般410円(高校生以下、65歳以上の方、身体障害者手帳等をお持ちの方は無料)
ミュージアムトーク
開催日時/2019年5月18日(土)13:30〜
申し込み不要、観覧券は必要。
香川県立ミュージアムホームページ
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