2020年08月28日

津田ふるさと海岸に天然藍染工房「Khimaira(キマイラ)」誕生@津田

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さぬき市津田町にある「津田ふるさと海岸」沿いに

目の前の海の青さに負けない「藍」の工房

天然藍染工房「Khimaira(キマイラ)」が誕生!


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地元にUターンして工房を立ち上げたのは、

藍染師と藍染アーティストという2つの顔を持つ

津田町出身の31歳、堀尾早敏さん。

藍染工房の中を見学しながら、お話を聞かせてもらいました。




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さぬき市津田町、津田の松原の西隣にある浜辺「津田ふるさと海岸」。

約1km伸びる長い海岸線沿いには、

昔から津田の産業でもあるシラス・エビの加工場が並んでいます。



近年「瀬戸内グラノーラファクトリー」や

「Cumi umi(ちゅみうみ)」といった地元の飲食販売店ができたり、

第2・第4日曜の早朝に「讃岐朝市」が開催されたりして、

だんだんと面白い場所になってきました。


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そんな「津田ふるさと海岸」にまたひとつ、面白い仲間が登場!

それが天然藍染工房「Khimaira(キマイラ)」さんです。



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「Khimaira(キマイラ)」の工房は「エボシカメレオン」のイラストが入った藍色の看板が目印。

色を如何様にも変えられることや、工房をされている染師の堀尾さんがカメレオン好きということから

「エボシカメレオン」がモチーフになっているのだそう。



建物は海岸沿いに並ぶ加工場と同じ雰囲気。

それもそのはず、こちらはもともとエビの加工場として稼働していた場所で

中だけを藍染用の工房に改造して作業を行なっているです。



ここでは子どもから大人まで楽しめる「藍染体験」も受付中ということで

工房見学と藍染体験に行ってきました!

(体験記事は後日掲載します)




「Khimaira(キマイラ)」さんの藍染工房で「藍」を知る


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工房の扉を開けると、お部屋の中にたくさんの藍色が。

こちらは「Khimaira(キマイラ)」を立ち上げた堀尾早敏さんがの作品展示場所。

マフラータオルや革小物などが展示されていました。



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革手袋も綺麗な藍色に染まるのですね〜!

藍染めの幅広さに驚きます。



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奥には染め用の工房が。

もともとエビの加工場だったと言われても納得の、

水はけのよいコンクリート床にたくさんの大きなバケツ。



工房のメインとなる中央には蓋つきの……

これは浴槽???



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(「Khimaira(キマイラ)」堀尾早敏さん)

「これは藍染めに使う『藍液』を入れた槽です。

 手前の丸いものは徳島でおなじみの大谷焼で、他は深さ85cmのステンレス槽を使っています。

 もともとエビの加工場だったこの部屋を好きに改築していいと言われて、

 深い穴を自分で掘って、コンクリートを流して槽を埋めました。

 藍染めも水を使うので、水産加工場をお借りできたのが本当に良かったと思います。」



しかし穴を掘って槽を埋めるのはかなりの重労働だったという堀尾さん。

これだけの規模の藍染工房は香川県でも他にないのでは?とのこと!




そして藍染めの主役となる「藍液」のことも教えてもらいました!


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(「Khimaira(キマイラ)」堀尾早敏さん)

「藍染めは植物の『藍』の葉を発酵させた液『染料液(すくも)』を作り、それで染めていきます。

 『藍師』と呼ばれる職人さんが夏に藍の葉を刈り取って乾燥し、

 秋に『寝せ込み』という発酵作業を行います。


 『寝せ込み』では土間の上に乾燥した藍の葉を置き、

 5日〜1週間に1度ほどの頻度で水をかけながらかき混ぜ、発酵を進めます。

 発酵熱で70〜80℃ほどまで温度が上がった葉にムシロをかけて、

 温度が下がらないように100日間同じ作業を行なった結果、

 やっと『染料液(すくも)』ができるんです。」



堀尾さんのような染めを専門に行う染師さんは、

藍師から『染料液(すくも)』を仕入れて藍液を作るのだそう。



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こちらが『染料液(すくも)』。

細かく砕いた木炭のように真っ黒です。


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(写真左がふすま、写真右が石灰)

この『染料液(すくも)』に石灰・ふすま・灰汁(強アルカリ)を混ぜて「藍液」にすると、

さらに発酵が進んで「藍色」に変わるのだとか!



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こちらが作って10日目ほどの「藍液」。

表面には泡がぶくぶくと出ていますが…


(「Khimaira(キマイラ)」堀尾早敏さん)

「これは『藍の花』と呼ばれていて、

 発酵のための微生物が中で生きている証であり、

 この状態なら染めてOKという印です。


 この藍液を作って長持ちさせるのに技術が必要で、

 『原料の染料液(すくも)』も高級なため、無駄にはできません。

 染めれば染めるほど微生物が少なくなるので、

 再び餌となるふすまを加えて藍液を育てていきます。



微生物、という単語にちょっとびっくり。

染めものは染料によって繊維を染めるというイメージでしたが、

藍の世界は微生物の力を借りて藍の色を出して染めるというのに驚きました!!!




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ちなみに大谷焼きに入っているものは一番長い1年ものの藍液。

新鮮な藍液に比べて色が薄いため、綺麗に染めるための下染用にしているのだそう。


表面にはふつふつと小さい泡が浮いています。

ここにも微生物が生きている…



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槽によって藍液の新鮮さを変え、下染め・中染め・本染めに使い分け

好みの色になるまで3回〜20回ほど染めると聞き、

藍染めの世界は知識と経験がなくてはできない仕事だと実感しました。


また、地下に槽を入れることで藍液の温度を一定に保ちやすくし、

常に藍液が25℃になるよう温度調節も行なっています。



植物の「藍」から『染料液(すくも)』を作り、

さらに微生物を育てて発酵させ、何度も染めつつ藍液を育てる「藍染」の世界。

手間も時間も随分かかり、原料となる『染料液(すくも)』も高級品。

藍染め品が自然と手の届かないお値段となるのも納得です。



そしてこの伝統的工芸技術を

さぬき市津田で残していこうという若手の方が出てきたというのも、

非常に嬉しくなりました。





堀尾さんが徳島ではなく津田で藍染をする理由

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(写真:「Khimaira(キマイラ)」の堀尾早敏さん)

「Khimaira(キマイラ)」は津田町出身の堀尾早敏さんが作り上げた藍染ブランドの名前。

堀尾さんと藍との出会いは7、8年前。

地元を出て東京に住んでいた時期に行きつけの服屋さんで藍染めの洋服を見つけてとても気に入ったのがきっかけだったそう。


藍染めの服のお値段は高くて手が届かない…

でも藍染めの服がどうしても欲しい!


と思った堀尾さんは、自分自身で藍染めをやってみようと考えるように。


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(写真:「Khimaira(キマイラ)」での藍染体験の様子)

都内にある有名な藍染施設で藍染体験をした後、

「もっと藍染を学びたい!」と藍の本場 徳島県上板町へ。

3年をかけて藍畑の作業から染め方までを学んだ後、

徳島と地元香川のどちらで工房を立ち上げるかでかなり迷ったのだとか。


(「Khimaira(キマイラ)」堀尾早敏さん)

「徳島にいればある程度藍の仕事がもらえるけど、香川では仕事がないかもしれないと思っていました。

 でもよく考えたら藍染めは工場みたいなものなので、どこにいてもできる。

 ならばバックアップが厚い地元に帰ろうと思ったんです。」


そうして堀尾さんの地元 津田町での工房探しが始まります。


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海が好きなこともあり、津田ふるさと海岸沿いの倉庫を探していたところで

思わぬ人のご縁で改築しやすい今の場所が見つかり、

改造に奮闘した後の2019年6月末から

「Khimaira(キマイラ)」の工房がスタートしました!!



地元で藍染めを始めたものの、

最初は藍の本場でない香川県で新規の仕事を取るのが大変だったそう。


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そんな中、今年の春に新型コロナウイルスの影響でマスクの需要が高まります。

そこでマスクを藍染めにしてみよう!と

「藍染マスク」を作って販売したところ、大好評に!

現在でも作ってはすぐ売れていくという人気アイテムになったのだとか。



そして今後の「Khimaira(キマイラ)」は…


(「Khimaira(キマイラ)」堀尾早敏さん)

「これまではOEMや委託販売も多かったのですが、

 今年の冬からは本格的にオリジナルのアパレルアイテムを作って販売します。

 藍染めのニット帽、Tシャツ、手袋(ウール)など、

 ネット販売はせずにあえて津田の工房のみで販売していきますが、

 ゆっくりと口コミで広がってくれたらいいなと思っています。」



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(写真:「第76回 現展」入選作品 『循環』)

さらにもう一つ、堀尾さんには「藍染アーティスト」という顔が。

藍染作家として現代美術の世界にも果敢にチャレンジされています。




新しい藍染の世界を見せてくれる芸術家としても注目したい逸材。



私も初めて美術作品としての藍染を見ましたが、

様々な手法で藍のキャンバスに描かれる模様は初めて訪れる外国の景色のよう。

予想不可能な世界でどうしてこんなに美しい世界が作れるのか本当に不思議です。



(「Khimaira(キマイラ)」堀尾早敏さん)

「実は一番頑張りたいのは、作家としての活動です。

 藍染めの世界にはないもの、何処かで見たことがあるものではない、

 独創的なものを頭のイメージのままに形にできたらと思っています。


 工房の2階も貸しギャラリーとしてオープンしますので、

 他のアーティストさんとのコラボレーションも楽しみたいですね。

 香川の作家さん、アーティストさんにどんどん来てもらいたいです。」



これからもどんな作品を作られるのか、とても楽しみな堀尾さん。

とってもきさくな方なので、藍染をよく知らないという方も、

一度「Khimaira(キマイラ)」さんに足を運んでじっくりお話してみてくださいね。


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海風に吹かれながら出会う藍の世界は、とっても心地よいですよ〜!



藍染体験と持ち込み素材の藍染オーダーも受付中。

「Khimaira(キマイラ)」さんでは「藍染体験」を3名以上で受付中。

「ハンカチ(1000円税込)」「手ぬぐい(1500円税込)」の染め体験ができ、作品は持ち帰れます。

ぜひやってみたい!という方は、気軽にお問い合わせを。


また、生地を持ち込んでの藍染体験や藍染オーダーも可能。

その場合は1g30円で染めることができます。

白いTシャツやワンピースの汚れが目立ってきた時や、藍染の洋服の染め直しにも一度お問い合わせしてみてくださいね。


次回の記事は「Khimaira(キマイラ)」さんでの「藍染体験」の様子をご紹介します!




「Khimaira(キマイラ)」さんのInstagramでは、

 体験されたみなさんの作品や堀尾さんの藍染作品が見られます。
  
 ↓





Khimaira(キマイラ)
場所/香川県さぬき市津田町津田1391
お問い合わせ先/080-6393-3104

藍染体験
ハンカチ(1000円税込)・手ぬぐい(1500円税込)
いずれも体験料、材料費込み。持ち帰れます。











posted by sanuki-asobinin at 14:20| 香川 ☁| Comment(1) | レジャー・アート・写真 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
偶然貴社の工房を発見しました。
藍染の色は最高に素敵ですが男性物の製品が何故か見当たりません。
78歳のなる男性ですが
コロナがおさまったら工房訪問させた下さい。
失礼します。

 高松市屋島東町1161-6
  080-3168-3672
Posted by 豊田洋一 at 2022年02月19日 09:59
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