海のそばの小さなまち、さぬき市小田で
移住農業者たちが新しい農業のスタイルを作ろうとしています。
それが小田の移住農業者チーム「TAGATAME」。
農業初心者でも1年目から自立できる仕組みや
農家の夢を叶えるための支援を考え動く彼ら。
「小田をオーガニックのまちにしたい!」という夢を掲げて日々邁進する
「TAGATAME」のみなさんをご紹介します!
さぬき市小田にやってきました。
小田は大串半島の東側にある港町。
山と海に囲まれた小さめの集落ですが高台からの海の眺めは最高。
のんびりとした空気と、人が混み合わない雰囲気を気に入り
この場所に別荘がわりの家を持ったり、釣りや海水浴に訪れる人も。
また、この地域が気に入って移住する若者や家族も少しずつ増えています。
中でも多いのが有機農家を始める若い方。
さらに移住した農家同士でチームを組んで活動を始めた方たちもいらっしゃいます。
それが「TAGATAME(誰が為・たがため)」。
自分よりも周りのみんなの幸せのために、というコンセプトのもと
「自立できる農家」を作るしくみと「個々人の夢」を実現するためのフィールドを小田で確立しようと
2021年春に結成されました。
移住農家を自然と引き寄せる「TAGATAME」
(写真左:「たたらぱん農園」鈩さんご夫妻、写真右:「RoyFarm」小泉さん)
現在のメインメンバーは、
高松から小田に移住し、有機農家4年目の「Roy Farm(ろいふぁーむ)」小泉さんと
関西から移住し、まだ就農1年目の「たたらぱん農園」鈩ご夫妻。
続いて最近、オーガニックスーパーをやりたいという女性も新たに増えたそう。
そんな「TAGATAME」の中心とも言えるのが「Roy Farm(ろいふぁーむ)」小泉さん
山梨県出身、大学進学を機に香川へ来られ、高松市の焼き鳥店で働いていました。
お店で扱っていた「大空のうえん」の有機野菜に出会ってから食べ物への考え方が一転。
本当に体にいいものはなにか?
自分で作ったもので料理ができないか?
という疑問から、農業への夢が膨らみ
「大空のうえん」さんのいる小田に来て、有機農家をスタートされました。
「たたらぱん農園」の鈩さんは、以前ご紹介した「さぬき市移住ガイドブック」の表紙にもなった方。
兵庫県のご出身ですが、大学進学を機に香川へ。
その時のバイト先が小泉さんの働く焼き鳥屋さんだったのだとか。
大学卒業後、関西に戻った鈩さんは製パン会社に入社されますが、
先住していた小泉さんの勧めもあり、
同じ会社で出会い結婚した麻琴さんと一緒に小田へ移住することに。
(写真左:「たたらぱん農園」鈩さんご夫妻、写真右:「RoyFarm」小泉さん)
(「RoyFarm」小泉さん)
「もともと食に興味があったんですが、若い有機農家さんに出会って、
自分も野菜を作りたいと思ったんです。
育てた野菜で料理を作って、小田でオーベルジュをしたいなと思って移住してきました。
小田には先輩農家さんもいるし、山も海もある。
このロケーションがいいですね。」
(「たたらぱん農園」の鈩さん)
「学生時代、バイト先でまかないを作っていたんですが、それをみんなが喜んで食べてくれてとても嬉しかったんです。
卒業後も食べるもので人を喜ばせたいと製パン会社に入社したんですが
夜勤も多くて毎日忙しい生活が続いていました。
そんな時、田舎暮らしが好きな妻と遊びに来た小田で小泉さんから食べ物の話を聞いて、
『人生かけて仕事して提供する物が、食べる人の体にとって本当に良いものなのか?』と思い始めたんです。
ならば安心できる素材を自分で作って、自分が本当に食べたいパンを作ろう!と
仕事を辞めて、ここに移住してきました。」
(「たたらぱん農園」の鈩麻琴さん)
「小田での生活は最高です。
昔から田舎での暮らしに憧れていましたが、自分がイメージしていたものと似ています。
農作業していると近所の方が声をかけてくれたり、野菜と魚を交換したりもするんですよ。」
鈩さんが住むおうちはかつて農家民宿だったところですが
農作業をしている時に声をかけてくれた地元の方が紹介してくれて
ここを購入することが決まったのだそう。
まもなく鶏や烏骨鶏なども家族に仲間入り。
夢見ていた移住後のくらしもちゃんと形になりつつあるのを見て
引き寄せられた人が幸せに暮らせる前例ができつつあると思いました。
「TAGATAME」の作るニューノーマル農業
そんな小泉さんと鈩ご夫妻はそれぞれの屋号で野菜を作り、販売もしていますが、
平行して「TAGATAME」としての独自の経営スタイルを確立しています。
「TAGATAME」の目標は「小田にオーガニックのまちをつくる」こと。
常に仲間を募集していますが、求めているのは「雇われる農業者」ではなく「独立した有機農家」。
新規で農業をやりたい人にはハードルが高いと思われそうですが、
そこをフォローする仕組みが「TAGATAME」にはあります。
「TAGATAME」ではチーム内で畑を共有。
同じ畑で同じ野菜を作り、利益を折半するというルール。
つまり、年功序列ではなく共生。
逆に「農業で儲けたい」という方は入りづらいと感じるかもしれません。
しかしこのシステムにはどの農家にとってもメリットがあります。
新規農家でも1年目から収入が得られるので農業を始めやすいことや
子どもが生まれたり病気で動けなくなってしまった時にチーム内の農家がカバーし合うことなど
お互いに「与え合う」ことを日常としています。
移住も就農も人生に大きなメリットをもたらしますが、同時に大きなリスクも伴います。
しかし物理的にもメンタル面でもフォローしあえるのが「TAGATAME」なのです。
また、食べる人にも幸せを、が「TAGATAME」のテーマ。
有機農法で育てた野菜たちは野菜本来の甘みや旨みを教えてくれ、体を元気にしてくれます。
小田の畑でケール、サンチュ、じゃがいも、人参、ハーブ、エディブルフラワーなどを育て
「春日水神市場」や小田にこの春できた「風と土びと」で委託販売しています。
わたしも旬の空豆をいただきましたが、さやにパンパンに入った大粒の豆とその美味しさにびっくり。
また「TAGATAME」の野菜が食べたい、という気持ちになりました。
有機農法の野菜を生活に取り入れたいという人はもちろん
小田に移住し、日々はつらつ笑顔で農業をしている彼らのパワーを吸収したい方は
まず野菜から手にとって味わってみてくださいね。
「TAGATAME」のこれから
(取材時には麻琴さんが手作りのハーブ水を出してくださいました)
今後は資金をもっと集めて共有できる資材を増やし、
新規農業者をもっと小田に呼び、
より1つの「村」として機能できるようにしていきたいとのこと。
夢を追いかけている人と人との掛け合わせで
ここに人を呼べるのが「TAGATAME」らしさ。
そして夢を叶える場所でもあるのが「TAGATAME」。
有機農業で作った野菜の料理を出す小泉さんの夢、オーベルジュ、
自家栽培小麦で作る鈩ご夫妻のパン屋さん、
動物好きの鈩さんが園長を務める牧場、
麻琴さんの夢でもある雑貨屋さん…
小田の山と海をで楽しむプランが泉のように湧き出ています。
これからの「TAGATAME」によってどんな形で叶えられていくのか楽しみです。
ご紹介した「TAGATAME」「Roy Farm」「たたらぱん農園」のお野菜は以下の場所で手に入ります。
■「TAGATAME」
・さぬき市小田「土と風びと」毎週金・土のみ野菜販売。土曜限定のカフェのメニューにも使用。
・高松市「春日水神市場」野菜販売
■「Roy Farm」「たたらぱん農園」
・マルヨシセンター内自然菜園コーナー
・その他、個人宅や飲食店への野菜セット定期便も受付中。
「TAGATAME」や野菜の情報は彼らのInstagramにもアップされていますので、ぜひチェックを!
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TAGATAME
Roy Farm
たたらぱん農園