私たちの生活の中でも使用頻度が高くなってきたLED。
その光でトマトが大きく美味しくなるってホント?!
徳島文理大学の梶山先生が香川県立石田高校とともに
高品質トマトの栽培実験を行っています。
当てているのはLEDの弱く薄い光。
なのに大きく甘いトマトがどんどん実る…なぜこんなことができるのか?!
将来的には地域の活性化に繋がる可能性も!
LEDの持つ力と作物の関係を梶山先生にお聞きしてきました。
徳島文理大学と共同で栽培実験を行っているという、さぬき市寒川町の香川県立石田高校にやってきました。
石田高校の園芸デザイン科は普段から野菜や花苗の栽培実習を行なっていますが、
栽培実験も敷地内のハウスで実習と並行して行なっているそう。
その実験のテーマとなるのが、
徳島文理大学 理工学部ナノ物質工学科の梶山先生が生み出した
「光を使った高糖度果実栽培技術」。
梶山先生は徳島文理大学に来られる前、日立製作所のプラズマディスプレイ研究員として活躍されていました。
プラズマ衰退のため研究所が解散となった後、
同研究所にあった植物研究室との交流を思い出し、
「人間用に作られたプラズマの暗い光が植物にもいいのでは?」と仮説を立てて、
レタスや水菜に光を照射する栽培試験を独自にスタート。
のちにプラズマよりも複数の条件で実験できるLEDに転向し、
現在も自分で作った装置での栽培試験を継続されています。
2014年から始まったこの研究、
微弱なLEDの光は植物に当てることで、CO2の吸収量を2倍以上に増加させ、
収穫量を増やしたり、果実の糖度を上げることがわかっています。
例えばぶどうやイチゴでは糖度が10%以上アップしたという結果が!
その技術を地域活性化と地域の産業振興に使えないかと中国銀行が注目し、
地元のさぬき市に紹介した結果、石田高校との官学共同研究がスタートしました。
石田高校では今年の春までLED照射によるトマト苗の生育試験を行っていたそう。
結果、特殊な光を付加することで葉の大きさや茎の太さの成長が促進することを確認。
実が成る段階ではどんな変化が見られるのか?と、
トマト苗をハウスに定植して4月から引き続き栽培実験を行なっています。
取材に伺ったのはちょうどトマトの収穫時期にあたる6月下旬。
縦長いハウスには240本の「桃太郎トマト」の苗が美しく3列に並べられて育てられています。
梶山先生に案内されてハウスの中央へと進んでみると…
天井に怪しい光を発見ーーーー!!!
細長い機材に、淡い光が4つ。
これがトマトを美味しくする光、LEDです!
驚くほどにシンプルかつコンパクト。
そしてLEDといえば「明るい」というイメージがありますが、それに程遠いほどの弱々しさ。
石田高校の試験ハウスではこちらを毎日、日没から夜通し照射しています。
ずっと点灯しているように見えますが、実は1秒間に100万回点滅している状態なのだそう。
この光が植物にいいんだと梶山先生。
(徳島文理大学 理工学部ナノ物質工学科 梶山博司先生)
「目に見えないほどの光だけど、植物は街灯の光よりも暗いLEDを本能で感じています。
そして植物のDNAにちゃんと信号を送っているんです、『成長しろ〜、成長しろ〜』って。
人間で例えると、高い山でトレーニングするとヘモグロビンが増えると言われていますが
それは酸素濃度が低い環境を感じたDNAが『ヘモグロビンを増やせ〜!』と信号を出すから。
結果、低地に戻った時に普段以上の酸素を体は取り込める体になる。
同様のことがLEDを当てた作物にも起こるのではないかと仮説を立てて、
それを解明するための研究をずっと行なっています。」
梶山先生の仮説は美味しい結果として証明されつつあります。
ハウスの中のトマトは、わずかなLEDの光を浴びることで
『光合成しないと!』と信号が出て成長につながっているようで
光を当てているトマトは、当てていないものよりも3割ほど多く実が成っているのだそう!
さらに光の効果で糖度も上がって甘いトマトが実るのだとか!
甘くて美味しいトマトがたくさん取れる。
育てる人にとってこんなに嬉しいことはありません。
LEDを当てたトマトとそうでないトマトは色味の濃さも違う!
一目でわかります!
通常の桃太郎トマトの糖度は4〜6度。
LEDを当ててみるとどうなるかな〜?と梶山先生がカットしてくださり、糖度計でチェック!
調べてみると、LEDを当てているものの方が糖度が少し高くなっていました!
これは収穫する前の段階のトマトでの数値。
収穫時期を迎えたものだともっと甘くなるのだそう。
LED桃太郎をお味見させてもらいました!
トマトらしい爽やかさを残しつつも味が濃い〜〜!!
ちょっと驚いたのは、太陽の光が当たりづらい場所のトマトが一番大きくて糖度が高くなるということ。
LEDとトマトの相性はかなり良さそうです!
(徳島文理大学 理工学部ナノ物質工学科 梶山博司先生)
「大きいトマトなのにこんなに甘いのは初めてと言ってくれる人もいますが
私もこんなに差が出ると思ってなかったんです。
しかも苗の段階からLEDを当てているものはより大きく育つとわかりました。
本来大きいトマトを甘く育てるには水分を絞りますが、
その分実が小さくなって目方が下がってしまう。
このやり方なら大きくて甘いトマトができ、ブランドトマトとしても販売するという未来があります。」
LED照射機は1ヘクタールで1ワットほどをカバーし、
消費減力が低いのに加えて20年使えるので、
農家さんにとってはローコストで品質向上が可能に。
生産量も増え、サイズも大きいままで甘く美味しいトマトができると収益安定にもつながります。
この上ブランドトマトができれば地域の活性化にもなり、
農業が潤うと分かれば後継者不足の不安もなくなって移住者促進にもつながると梶山先生。
(徳島文理大学 理工学部ナノ物質工学科 梶山博司先生)
「大学の研究室だけではここまでの規模はできませんでした。
石田高校ではちゃんと収穫し、販売まで行ってくれる。
始めるまでは『農業はそんな簡単なものではない』とか『専門家ではないから』と言われたりもしましたが、ここまでできたのは人の縁だと思っています。
この技術でさぬき市の農業が発展してくれたらと思います。」
現在はトマトだけでなく、さぬき市のぶどう農家さんと一緒に生食用ぶどうでLED照射実験を行なっている梶山先生。
こちらも順調に成果が出ているようです。
物理の力で農業が、地域が変わる。
そんな将来も遠くないと感じられる嬉しい取材でした。
今後も梶山先生の研究から目が離せません!
徳島文理大学
お問い合わせ先/087-899-7248(理工学部ナノ物質工学科)
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