家を建てる達人が思うがままに古民家をリノベーションしてみたら?
そんな遊び心溢れる空間がさぬき市大川町に誕生しました。
築100年の古民家を再生した
レンタルスペース・一棟貸しの宿「はちどり」。
アメリカの古材を使った大胆な床の間、壁に白黒の和紙をあしらった和室、荒土壁の寝室。
どこを覗いても作り手のワクワクが滲み出ています。
大切な人たちとお籠りしたくなる「はちどり」の心地よさをご紹介します。
さぬき市大川町にやってきました。
長尾街道を冨田茶臼山古墳よりさらに東に駆け抜けると穏やかな山裾の風景が道の両脇に広がります。
街道から細い山道をすこしだけ入ったところに、築100年の古民家を再生した新しいスポット「はちどり」が誕生しました。
離れ・広い庭ありの広い敷地にある民家。
どうにかうまく再生してほしいと、この家の方とお知り合いだった高松市の工務店「樹工舎」さんが2年前に譲り受け、じっくりと時間をかけてリノベーション。
何度かリノベーションした跡があったおかげで家の状態も良く、作家さんが使えるギャラリーや大人が集って遊べる場所にできたらと作業が始まりました。
昨年12月に地元の作家さんの個展会場としてお披露目され、今年夏ごろからは中学生以上の大人がゆっくりと過ごせる1棟貸しの宿としても稼働する予定です。
庭木がたくさん植えられてあったという山裾の敷地は美しく整地され、駐車場には新しい木を植樹。
面する離れからは心地よい風が抜ける様子がカーテンの揺らぎでわかります。
離れを回り込むと木造の小さな小屋と広いお庭が。
小屋は今後実際にサウナとして使用されるそう。
リノベーションを手がけた「樹工舎」の矢野さんはもともと大工さんで、木が大好き。
「見せられるところにはできるだけ木を使いたい」と、要所にさまざまな木材を使用しています。
さっそくエントランスから木目のアーチがお出迎え。
板張りの道はとても柔らかく、歩みを進めるごとに緊張していた心が解けていくよう。
入り口にはほんのりと優しい灯り。
「はちどり」は矢野さんが好きだという世界最小で幸せを運んできてくれる鳥「ハチドリ」から名前をとったそう。
扉を開けてみると、
仕切りのない広い空間が迎えてくれます。
土間式の部分にはキッチンと寝室。
靴を脱いで上がる場所にはリビングルームや和室・トイレ・お風呂、そして2階への階段があります。
ところどころに作家さんの作品も。
こちらは先日ここで個展をされた香川在住の上野剛児さんの作品ですが、随分前からこの家にあったかのように馴染んでいます。
土間部分にある銅をおもむろに巻きつけた柱にも驚きます。
きれいな円柱、角柱、いびつな3兄弟。
表面を人が触ることで変わっていく銅の風合いがとても面白いと思いました。
土間部分は一部荒土の壁になっていて、その中心に「土の間」があります。
この入り口、秘密基地みたいで気になる…笑。
中も土壁。そして寝室でした!
土間から上がってお布団で眠る和室。
ぐるりと土に囲まれているので、かまくらのなかにいるみたいな気分に。
土間から上がる踏み台にはとても立派な木が使われています。
側面は削ったようすが剥き出しになっていて非常にダイナミック。
土に木。
自然のものに囲まれて眠るのは気持ちいいだろうなあと思いました。
土間部分には手洗い場もありました。
土壁の中に赤い蛇口と陶器の水受け鉢、このカラーリングもおしゃれです。
さて靴を脱いですぐくつろげるリビングスペースに上がってみましょう。
大きな円卓は矢野さんが新築住宅を手掛けるときにお願いしている大川町の家具職人「wood-furniture+1」さんにオーダーしたもの。
ひそかに縁がまあるく傾斜づけられていて肘や指を置きやすくなっています。
床暖房も完備で歩いても座ってもぽかぽか。
円卓奥には昔ながらの床間がありますが、この模様にはびっくり!
なぜこんなにまだらなのか??
こちらは矢野さんがアメリカの古材を集めている木材屋さんから仕入れたもので、カンナで削りつつあえて黒く焼けた場所を残したのだそう。
こんな木材があることにも驚きましたが、これが床の間として違和感なくできあがっているところに感動!
仕切りの隣には和室があります。
間取りから民家だったころの面影も残っていますが、自然光がたっぷり入ってお昼寝や読書したくなる空間に。
和室の前の窓からは、奥の広いお庭が一望できます。
これからお庭の達人たちが立派に手がけてくれるとのこと。
どんな景色が眺められるようになるのか、楽しみです。
リビングスペースの横にはお手洗いとお風呂が。
お風呂がこれまた面白いよと教えてもらって覗いてみると…
なんと五右衛門風呂〜〜〜!!!
大胆に入りたくなります!
実際に宿泊者が薪を使うのは危ないので、給湯にてお湯を入れていきます。
この反対側にはシャワーもありますので、ゆっくりとお風呂タイムも楽しめます。
それでは気になる2階へ!
階段は忍者屋敷のように幅が狭くてワクワク♪
階段には色合いの深い、古い木材が使われています。
ちらりと備え付けられた照明器具も素敵なデザイン。
「はちどり」の中にはちょっとした場所にさまざまな照明器具があしらわれていますが、どれも個性的な作品ばかり。
見惚れてしまいます。
2階に上がると目の前には広いフローリングのスペース!
自然光もたっぷり入って、ここでもお昼寝や読書をしたり仲間たちとゆっくり語り合いたくなります。
1階以上にあたたかくて、心地よい空間です。
反対側はガラス越しに階下を見渡せる気持ちのいい渡り廊下。
角には先日ここで個展を行なっていたよしおかりつこさんの作品が。
この中にすっぽり体を入れることもできて、ちょっとカオスな気分に。
さあ、階段を降りたらリビングから離れへ。
一度扉から外に出て渡り廊下を渡って、お庭を横目に眺めながら進みます。
お庭を眺めた後は渡り廊下の先の離れへ。
壁には内装解体時に出てきた床板をそのまま使っています。
誰かが書き記した文字がそのまま板に残っているのも味わい。
通常オーダーされる住宅ではできない試みも、「はちどり」だから楽しみながらできるのだそう。
離れのドアノブも木。
しかも流木です!
離れの特徴は「和紙の部屋」。
京都の和紙職人 ハタノワタルさんがこの部屋のために紙を漉き、この場所まで貼りに来られたそう。
ドアもその風合いから鉄製だと思っていたら実は和紙。
色の濃淡や鉄のような味わいを表現できるなんてびっくりです。
離れの和室二間も壁・床全てハタノさんが手がけた「和紙の間」。
つるつるの歩き心地、すべすべの壁。
白・黒モノトーンの床間が並ぶ、現代アートのようなお部屋です。
もう一つの和室には丸く壁が抜かれていますが、こちらはもともとあったもの。
よしおかりつこさんの作品とあわせて芸術祭の一場面のようです。
和室のすぐ外の廊下は外からの風が吹き抜ける縁側。
ここからは大川町南部の山並みが望めます。
母屋も離れも間取りや天井の高さは民家ならではのものなのに、ワクワクするお部屋ばかり。
自分ならここでどう過ごそう?と想像して楽しんでしまいました。
作り手のワクワクが散りばめられた「はちどり」
なぜこんなに「はちどり」にワクワクするのか?
その秘密は作り手の気持ちにありました。
リノベーションを手がけた「樹工舎」の矢野さんは、普段お客様からお金を頂いてニーズにあう家を造られていますが、「はちどり」は別。
仕事の合間にこの場所に足を運びながら、職人さんと一緒にやりたかったことをやってみたそう。
一般的な住宅には使わない素材や技術を使ってみたり、垣根の焼き杉も自分たちで木を焼いてみたり。
その様子を写真で見せていただくと、なんとも楽しそうな矢野さんと職人さんの姿が。
大工としてさまざまな職場を渡り歩き、工務店として独立されてからも技術を共有しながら家づくりをされてきた矢野さんと職人さんの関係だからこそ出来上がった匠の空間。
要所から滲み出る「わくわく」から職人さんの挑戦する意気込みも感じられます。
(「はちどり」リノベーション担当「樹工舎」矢野さん)
「お披露目はしたけれど、まだやれることがあるし、やりたいことがあります。笑
これからも少しずつ変えながら、この場所のコンセプトに共感してくださる方にここを使ってもらえたらと思います。」
今後もギャラリーとしての作家さんの個展会場やイベント会場として活用され、またお宿としても多くの方が訪れる場所となる「はちどり」。
壁に触れ、木に触れ、いろんなお部屋に身を置いて、作り手たちの想いをじわりと感じてみてくださいね。
ちなみに夏から始まる一棟貸しのお宿のコンセプトは「生きることは食べること」。
建物にこだわるなら食べるものにもこだわりたい考え、地元の食材を使った料理を地元の料理人が手がけた食事をいただくことができます。
夕食はシェフが「はちどり」まで温かいものを作りにきてくださり、朝食は地元で藍染した桶に手作りのおむすびを詰め込んだものが届きます。
宿泊する人が直接会うのは夕食時のシェフのみ。
生活道からも一本離れ、静かな山の中にある一軒家でゆっくり過ごすことができ、できるだけ人に会わず、しっかりお籠りできます。
中学生以上で定員6名まで宿泊可能なお宿になる予定ですが、詳しくはお問い合わせを。
はちどり
場所/香川県さぬき市大川町田面256【地図】
お問い合わせ先/080-3921-3506
お問い合わせ先/080-3921-3506