2022年11月19日(土)
さぬき市前山の「おへんろ交流サロン」にて
毎年恒例の「空海セミナー」が開催されました。
今年はお遍路の本質とも言える「お接待」を深掘り!!
お遍路の歴史の中でのお接待の変遷を知るとともに、
実際にお接待されているみなさんのお話やそれを受けたお遍路さんの声が聞ける貴重な機会となりました。
未来のお接待について考えることも多かった「空海セミナー」の様子をご紹介します!
「空海セミナー」はさぬき市前山地区のみなさんと、さぬき市の遍路の達人「おへんろつかさの会」のみなさんが開催している年に一度のお遍路に関する学びのイベント。
今年も前山の「おへんろ交流サロン」に会場を設け、リアルタイムなオンライン配信を通じて開催されました。
今年のテーマは「お接待」について。
四国遍路の歴史を語る上で欠かせないキーワードです。
第1部は『お接待の歴史と変遷』について「おへんろ交流サロン」片桐館長の講演会が行われました。
「お接待」の一般的な意味は『旅人にお茶を施してもてなす』こと。
実際に文献を調べてみると1245年頃の鎌倉時代から「接待」という言葉が残っているのだとか。
四国内には今でもその接待場所であった「茶堂」が残っている場所が。
例えば香川県まんのう町 旧阿波街道の沿いある「茶堂」は、かつて借耕牛をやり取りするために切り開かれた阿讃山脈の道沿いに存在。
茅葺屋根に四つ足柱のみの開放的なつくりで『四つ足堂』と呼ばれていたそう。
金毘羅参り・お遍路・行商の方が立ち寄りお茶を飲み、疲れを癒していたようです。
愛媛県にあった茶堂の中には中央に囲炉裏の跡も。
ここで常に何かを炊いてお接待をしていたことがわかります。
(当時の絵画に残る弥谷寺の茶堂)
江戸時代の日記を読み解くと、さらにお接待場所やお接待の内容までわかるそう。
例えば六十六番札所雲辺寺〜六十七番札所大興寺の間には白藤大師堂・土仏庵・大興寺で。
八十五番札所八栗寺〜八十六番札所志度寺の間には六萬寺・志度町内のとある場所でお接待が行われていました。
お接待の内容としては宿を貸したり、赤飯・京芋の吸い物・たばこなどを提供していたことが記されています。
さらに志度町のお接待所では小豆島からわざわざ来られた方がお接待されていた様子。
江戸時代になると旅人も増え、その地域の人が接待を行うことが多くなったのだと考えられています。
その詳細が札所・遍路道沿いに残る石造物からわかることも多く、絵図にもその接待所が記されていることも。
面白いものではさぬき市造田には田んぼの横に石碑が残っており、地域の人がお遍路さんを助けるために田畑を寄進して、ここで作ったお米や味噌・野菜などの食べ物でお接待を行っていたということもわかっています。
これが今の「四国遍路のお接待」の基礎になったのです。
現代になっても札所や接待所に地域の方が出向いて行うお接待が継承されています。
例えば「かがわ長寿大学」に通う「亥子の会(いねのかい)」の皆さんは、「おへんろ交流サロン」や札所の中での自主的なお接待をされています。
遍路道沿いにあるうどん屋さんではこんな看板も。
遍路道沿いにあるお地蔵様にお花を添えるのもお接待です。
これは地域の皆さんによって受け継がれている日常の風景でもあります。
前山の「おへんろ交流サロン」でも大窪寺に向かう前に立ち寄るお遍路さんに向けて、さまざまなお接待を行なっています。
歩き遍路・自転車遍路の方へ「遍路大使任命証」を発行しているのもその一つ。
また、お茶・お水・お菓子、道案内などのお接待はもちろん、地域住民の方が手作りされた飴やポケットティッシュなどの接待。
個人の方が作られた札所の映像を集めたCDのプレゼントも。
たまに足ツボマッサージにきてくださる三木町の方もいらっしゃるのだとか!
疲れた足に効くこのお接待はお遍路さんの心も癒してくれます。
(「おへんろ交流サロン」片桐館長)
「おへんろ交流サロンは八十七番札所長尾寺〜八十八番札所大窪寺の遍路道沿いにあり、誰でも入りやすい立地・間取り。
それを生かして、この場所を四国遍路の拠点としてだけではなくお接待の拠点としても活用してもらいたいです。」
片桐館長はお接待を後世に伝えるためのきっかけとして、地元高校生へのアプローチも始められています。
つい最近では高松東高校の生徒たちが長尾寺でのお接待を行なったそう。
メッセージ付きのプレゼントはお遍路さんの心にも響いたはず!
実際にお遍路さんと触れあうことで、身近すぎて当たり前になっている四国遍路を地元の若者に再認識してもらう狙いがあります。
交通機関の発達や生活の変化による歩き遍路の減少によって、お接待も減りつつある現状。
地域の若者たちにお接待を体験してもらうことは、お接待と四国遍路を未来へつなぐための大きなアプローチになっていると感じました。
リアルなお接待の声を聴く
第2部ではお遍路の拠点となる「おへんろ交流サロン」でのお接待の内容や、実際に四国遍路でお接待をされている方・お遍路さんの声をインタビュー動画で観ることができました。
お接待をされている方としては、「おへんろ交流サロン」で20年間にわたりお遍路さんを迎えてきた地元の秋友京子さんや、札所などで自主的にお接待を行う「亥子の会」のみなさんが登場。
「亥子の会」は長寿大学に通う60歳以上の皆さんで結成されているため、中には車の免許を返納される方も。
四国遍路の札所は車でなければ辿り着きにくい場所もあり、車を運転できるメンバーを確保しなくてはならないという課題もあるそう。
お接待を受けた歩きお遍路さんのお話では、「夏場に喉が渇いた時に差し出してくれた果物に救われた」という感謝の声も。
実際に歩き遍路を行ってお接待を受けたことが心に残り、お接待する側となって遍路に戻ってくる方もいらっしゃるようです。
例えば八十六番札所志度寺〜八十七番長尾寺の遍路道沿いにある「当願堂」では、四国遍路を体験して志度に移住された内柴さんが無人のお接待を行っています。
内柴さんもお遍路を行なった時のお接待が忘れられず、今度はお接待する側になりたい!とこういった活動を始められました。
飲み物やお菓子を入れたクーラーボックスとノートを添えて置いておくと、そのノートにはいつしか多くのお遍路さんがメッセージを書き記すように。
「もう少しで結願という時に、こんな温かいお接待を受けられて本当に嬉しい」といった多くの感謝の気持ちが綴られ、中には「四国遍路は感謝の旅」と書かれている方も。
お接待を通じてお遍路の本質が見えてくるというのがよくわかります。
四国に生まれると何気ない日常の中にお遍路さんが馴染んでおり、深くお遍路やお接待について考えることはありませんでした。
しかしこういった現場の声を聴くことで、お接待が歩き遍路のみなさんの心の拠り所になっていること、遍路を後世に紡ぐ大きなポイントがお接待であるということが改めてわかります。
「空海セミナー」を通じて、私も実際にお接待をしてみたいという気持ちにも。
また多くの若者たちにもお接待の体験を通じて遍路を知ってもらい、自然と四国遍路が後世に伝わっていけば良いなと感じました。
「空海セミナー」がYoutubeでもおさらいできます!
「空海セミナー」の内容や過去のセミナーの内容が「おへんろつかさの会」のYoutubeチャンネルでおさらいできます。
今年のセミナーは後日アップされますので、しばらくお待ちください♪
チャンネル登録はこちら!→ 「おへんろつかさチャンネル」(Youtubeに飛びます)
遍路やお接待の現場を感じられるイベントが開催されます!
2023年2月23日(木・祝)には恒例となった「一日一斉おもてなし遍路道ウォーク」が開催されます。
このイベントは四国遍路道の約1200kmのいずれかの場所を、同じ日・同じ時間帯に歩き、遍路道のパトロールや休憩場所・トイレの整備を行うもの。
同時に当日参加される方へのお接待側としても参加することができます。
参加賞としてオリジナルのタオルマフラーもいただけますよ♪
参加してみたい方は「NPO法人 遍路とおもてなしのネットワーク」公式サイトにてルールを確認の上、ご応募ください。
申し込み期間は2022年12月1日〜2023年1月31日です。
■一日一斉おもてなし遍路道ウォーク
開催日時/2023年2月23日(木・祝)
場所/遍路道点検マップ上のお好きな10km区間
参加人数/ひとり〜グループでの参加可能
お接待参加の場合/遍路道点検マップ上のお接待が可能な場所にて、使用許可を得た上で参加を。お接待用品は各自準備のこと。
申し込み方法/公式ホームページの専用申し込みフォームからお申し込みください。
お問い合わせ先/087-814-5459(NPO法人 遍路とおもてなしのネットワーク)
空海セミナー「四国遍路を支える”お接待”とは?!」〜オンライン配信〜 ※終了
開催日時/2022年11月19日(土)10:30〜12:00
定員/200名
参加費/無料(要事前登録)
お申し込み・詳細/おへんろつかさの会 公式ホームページ https://www.ohenrotsukasa.com
お問い合わせ先/0879-52-1022(道の駅ながお内 前山いきいき事業協議会)
前山おへんろ交流サロン
住所/さぬき市前山936番地 【地図】
営業時間/8:00〜16:00
定休日/年末年始
駐車場/あり
HP/http://www.geocities.jp/sanukimaeyamanet/ohenro/sisetu/sisetugaido.htmlお問い合わせ先/0879-52-0208
【おへんろ交流サロン関連記事】