2023年08月25日

茅葺屋根は奥深い!「旧恵利家住宅」保存修理工事に密着!@大川

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四季折々の花やキャンプで楽しめる大川町の「みろく自然公園」。

ここに香川県最古の農家住宅があるのをご存知ですか? 

重要文化財、旧恵利家住宅。

今年春から秋にかけて保存修理工事が行われています。

身近な場所にあるのに、どんな文化財なのかあまり知られていない「旧恵利家住宅」。

7月29日(土)に開催された保存修理工事の見学会に参加して、茅葺屋根の面白さをたくさん教えていただきました。

今回の工事のポイントや修理後の見どころをご紹介します!




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「旧恵利家住宅」は昭和46年に重要文化財に指定された香川県最古の民家。

その建築年代は江戸時代中期ごろと言われており、軒下まで茅を葺き下ろす「ツクダレ」という屋根の形状や、装飾性が少ない構造から古いものであるということがよくわかるそう。


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もともとは大川ダムの近く、大川町田面の新名地区に築造されており、その当時の所有者は藻玉さんという方だったそう。

19世紀ごろに恵利さんが所有者となり、その後も大切に守り続けてきました。


昭和45年、恵利さん個人で保存していくのが難しいことから、旧大川町に譲り受けられ、その際に大川町田面の砕石地区に移築。

翌年、昭和46年に重要文化財に指定されました。

その後、2度目の移築工事が行われ、平成13年には「みろく自然公園」の現在の場所に落ち着きました。


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公園に訪れる人が自由に見学ができる貴重な文化財として親しまれていましたが…

移築されてから20年経ち、雨漏りがひどくなってきたことをきっかけに今年春から保存修理工事をすることが決定!

主な修理内容は茅葺き屋根の全面葺替えと土壁・建具の一部補修です。


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(徳島文理大学文学部 文化財学科教授 清水真一さんとゼミの学生さんたち)

7月29日(土)には工事の状況を一般の方にも見てもらいたいと、「旧恵利家住宅」の保存修理工事見学会が開催されました。

徳島文理大学の文化財を研究されている清水真一教授とゼミの学生さんも見学に訪れるとお聞きし、一緒にお邪魔させていただきました!


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現場に行ってみると屋根はブルーシートに覆われていましたが、合間から茅がちらり。

葺替えたばかりの茅葺き屋根を見るのは初めて。

その色の美しさに驚きました。


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(写真左から株式会社藤木工務店の綾田さん・茅葺き職人の美山茅葺会社 大下倉さん)

現場では株式会社藤木工務店さんと、日本で200人ほどしかいない(!)という茅葺職人さんが毎日暑い中作業をされています。

見学会では作業の細かい内容や使用している道具まで詳しく説明してくださいました。


工事の取り掛かり時には穴が空いて痩せこけた部分もあったという「旧恵利家住宅」。

まず古い茅を撤去しはじめたところ、軒まわりの痛みがわかり、新しく滋賀県のマダケを使って竹材をやりかえる作業を行ったそう。


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竹の上を覆う茅。

「茅」と一言で言ってもその種類はススキ・ヨシ・ワラ・イネなどさまざま。

その地域で調達しやすいものを使用しますが、今回は日本の茅二大産地のひとつ、熊本県阿蘇産のススキを混ぜて使用。


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背の高い茅材。

いずれも1m80cm〜1m50cmほどにカットして使用します。


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竹材の上に茅を一列に並べたら、さらに垂直方向に竹を置いて抑えます。

この作業を屋根の厚みが50cmになるまで繰り返します。


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最後は職人さんが自らの手で茅を綺麗に揃える『しあげ刈り』。

これで美しい屋根の形に整えていきます。

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葺替え方の状態がもっとよくわかるよう、足場まで登らせていただきました!

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間近でみる茅葺屋根。

横に這わせた竹は職人さんの足場です。

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屋根のてっぺんには置かれていた大きな瓦は一旦外されていました。

茅葺きの上に瓦を置くのは、香川をはじめこの周辺で見られる農家住宅の特徴でもあるそうです。


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屋根の四隅は特に茅の量や向きの調整が難しそう。


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職人さんの仕上げ刈りでなだらかな屋根が出来上がります。

切り方がまちまちだと雨が上手く下に伝わず、水捌けが悪くなってしまいます。


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「旧恵利家住宅」はL字の建物のため、屋根もL字型。

特にカーブの部分は雨水の流れ方も代わり、それが家を傷める原因にもなるそう。

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中の様子も見せていただきました!

外は35度だけど、中は涼しい〜〜!!!


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ひんやりとした住宅の中には煤で染まった梁。

竈や囲炉裏で火を使うことによって屋根も適度に乾燥したり害虫を退治でき、長年住宅が保たれるしくみになっていたそう。

人が暮らすことで、家も茅葺屋根も長生きできるのだと感じました。


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屋根の内側の様子がこちら!

竹を組んだ上にダイレクトに茅を重ねただけなのに、雨や雪に強いもの。

昔のひとたちの知恵から生まれた構造です。


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葺替えられた屋根は30〜40年ほどもつと言われていましたが、最近ではゲリラ豪雨も増えたことで10〜20年ごとのメンテナンスが必要になっているのだとか。

また、葺替えの際には費用がけっこうかかってしまうもの。

文化財として農家住宅を保存していくのは大変なのだと感じました。


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「旧恵利家住宅」の保存修理工事では、屋根の葺替えの後に雨漏り後の土壁の修繕や建具の作り替えが行われ、10月末ごろには保存修理工事が終了!

この秋には新しい「旧恵利家住宅」がお披露目される予定です。


職人の大下倉さんも「綺麗に葺き替えられた屋根はまるで黄金色に輝きますよ」とのこと!

ぜひその際にはあなたも「みろく自然公園」に足を運んで、新しい「旧恵利家住宅」を見学してみてくださいね。




重要文化財 旧恵利家住宅 保存修理工事
期間/2023年4月〜10月末予定

重要文化財 旧恵利家住宅
場所/みろく自然公園 駐車場西側 (香川県さぬき市大川町富田中3277)【地図】
お問い合わせ先/0879-26-9974(さぬき市教育委員会 生涯学習課)


posted by sanuki-asobinin at 14:06| 香川 ☁| Comment(0) | 歴史・文化財 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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