2024年6月30日(日)大串半島活性化プロジェクトの新施設
「時の納屋」がグランドオープン!!
記念式典では建物を手掛けられた建築家の堀部安嗣さんをはじめ多くの方が出席されました。
目の前の瀬戸内海をバックにヴァイオリンの記念演奏も行われました。
プロジェクトのスタートから6年。
コロナ禍を挟みながらも無事に完成した「時の納屋」を眺めながら堀部さんも嬉しそう。
改めてこの場所のコンセプトや、建築物としての見どころを堀部安嗣さんにお伺いしました。
「時の納屋」グランドオープンの2024年6月30日(日)。
大串半島は小雨がぱらつくお天気となりましたが、オープニングセレモニーの時間には雨も止み、滞りなくテープカットが行われました。
続く記念式典はパノラマの瀬戸内海を眺められる場所に完成した「時の納屋」にて。
海に面した北側の窓を開け放し、鳥の声や風が中に舞い込んでくる素敵なシチュエーションの中で始まりました。
さぬき市大山茂樹市長も長年の思いが形になり感無量の笑顔です。
(さぬき市 大山茂樹市長)
「完成はしたけれど、これからが大事だと気を引き締めています。 この場所に多くの人に来ていただいて理解していただくのが、本当の完成に近づくことだと思っています。」
(写真:建築家 堀部安嗣さん)
コロナ禍には大串に足を運ぶこともできなかったという建築家の堀部安嗣さん。
昨年夏に工事が始まってからこの日までに20回ほど現場に通われていたそう。
(建築家 堀部安嗣さん)
「完成してホッとしてると同時に、これからどういうふうにこの建物と周囲が成長していくのか。
見守って行きたいですし、さぬき市の皆さんと一緒に今後も伴走して行きたい。
むしろスタートラインに立ったような気持ちです。」
(写真:株式会社 菅組 代表取締役社長 菅徹夫社長)
そして大山市長から「時の納屋」の設計を手掛けられた堀部安嗣さんと施工を担当された株式会社 菅組さんに感謝状が手渡されました。
工事着工から1年かからず完成した「時の納屋」ですが、それは菅組さんの技術あってこそと堀部さん。
株式会社 菅組さんは宮大工集団からスタートした地元香川の会社。
現在も多くの大工さんが在籍しており、難しい建築物や伝統的建築にも取り組んでいます。
(株式会社菅組 代表取締役社長 菅徹夫社長)「通常の工法ではない初めてのやり方に挑戦することになり、我々も戸惑うことが多かったです。
今回は宮大工チームを派遣しましたが、だからこそできたものだと思います。」
最後に記念アトラクションとして三武睦弥さん・亜紀子さんご夫妻によるヴァイオリンの演奏も行われました。
この場所で演奏することが決まり、実際に現地に足を運んで曲を選んだというお二人。
アダージョ「コンチェルトBWV.1060」第2楽章から始まり、風笛「あすかのテーマ」、ジブリ映画「ハウルの動く城」より人生のメリーゴーランドなど、瀬戸内海をバックに4曲の演奏となりました。
天井の高い「時の納屋」の中にヴァイオリンの音色が響き、心地よく大串の風と交わる時間。
ちょうど背景では大型の船が行き交う様子が見られ、ゆったりとした時の流れを贅沢なシチュエーションで楽しむことができました。
式典後はこの日からカフェ営業がスタートする「時の納屋」のドリンクが振る舞われ、ここでの時間を出席者のみなさんも楽しまれていました。
完成した「時の納屋」で過ごす堀部安嗣さんの思いは6年という歳月を経て形になった「時の納屋」。
手掛けられた建築家の堀部安嗣さんにとっては初の公共建築となり、思い出深いものができたとお話しされていました。
これまで手掛けられた住宅・高知県の「竹林寺 納骨堂」・瀬戸内海を航行する宿泊型の客船「guntu(ガンツウ)」にも共通する堀部スタイルも見られ、建築ファンにとっても楽しめる作品のひとつが完成。
そこで堀部安嗣さんに『建築』の目線で楽しむ「時の納屋」のポイントを教えていただきました。

まず「主役は建物ではなく自然」という大串半島活性化プロジェクトのテーマに取り組むためにタッグを組んだのが、ランドスケープデザイナー・造園家の田瀬理夫さん。
アスファルト舗装道に鉄筋コンクリートが立ち、海と芝生広場の境界には柵が設置されていた大串公園の芝生広場ですが…
すっかり生まれ変わりました!
メインアプローチには昔から大串に自生していた植物の小さな苗が植えられ、足をすすめると見えてくる「時の納屋」と瀬戸内海。
「国立公園で過ごす」ことを存分に楽しめる景色が完成しました。

メインアプローチを歩いていくと見えてくる「時の納屋」。
こちらには奈良県の吉野林業地帯でとれる吉野杉をふんだんに使っています。
「オール杉」と言ってもいいくらい、木ではない素材を見つけるのが難しいほど。

屋根の瓦にも実は特徴が。
色味が通常の瓦よりも薄いグレー色の淡路瓦を使用しています。
日本瓦との違いは鬼瓦などのごてごてとした装飾がないところ。
とてもシンプルな作りであることが、遠くから見た時の印象にも影響してくるのだそう。
また、建築物としての面白いところをお聞きしてみると、「時の納屋」が縦・横の十字で整えられていることと堀部さん。
これは構造を手掛けられた構造家の下山聡さんの提案です。
(構造家 下山聡さん)
「空間を作る際、斜めの材料を多用すると安定するので比較的簡単に建てることができますが、日本の古い建築は斜めを嫌います。
例えば清水の舞台とか思い出してみてください、垂直でしょ? 屋根だけが斜めになっている。
なんで日本は斜めを嫌うのかというと、それは美しさです。
垂直だけで作ろうとすると木の組み方の精度が高くないと難しいが、日本人には高い技術があるから。
東大寺も南大門も全部水平構造ですし、そう言う意味では『時の納屋』は奈良の建築と近いですね。」

建築的にも非常に難しいものを形にしたのが株式会社菅組さんの宮大工チーム。
特に内部の天井のこの梁!!
無柱空間に、上へ上へと十字に組まれた挟み梁の組み梁は圧巻!
これらも宮大工さんの技術で組みあげ、必要最低限使用するボルトも視界に入らない場所でその役割を果たしています。

そして一番の見どころは小豆島を望む瀬戸内海に面した窓。
縦横の比率は一番美しくこの風景を切り取ることができるように計算されています。
実際にここからの風景を眺める人たちを見て「新鮮な驚きを感じたり故郷に帰ってきたような眼差しを感じて、それが一番嬉しかった。」と堀部さん。
最後に「時の納屋」の中でも好きな場所をお聞きしてみると…
(建築家 堀部安嗣さん)
「どの場所もいいように設計しているんですよね。笑
でもあえて言うなら北側の窓から出たところにあるウッドデッキです。
季節のいい時や天気の良い時にはここにテーブルを運んでカフェを楽しんでもらえたら、素晴らしく居心地の良い場所になると思います。
スタッフの人に『外で食べたいんだけど』ってリクエストしてみてください。」
実際にこの場所に立って海を眺めると、お寺の縁側で静かに枯山水を眺めている時のような気持ちに。
心ゆたかに、自分と向き合える時間がもできそうです。
景色を切り取る額縁の外に出て楽しむ「時の納屋」もまた最高です。
自ら自然の一部になって時間の流れの悠久さに溶け込んでいく。
そんな体験をしに「時の納屋」へ足を運んでみてくださいね。
時の納屋
場所/香川県さぬき市小田2671-75(大串半島・大串自然公園芝生広場内)
営業時間/11:00〜16:00
定休日/火曜
駐車場/あり
お問い合わせ先/087-884-6010
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