2024年09月23日

小西和特集Bやしまーるでの小西和展とトークイベントレポート@高松市

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「瀬戸内海国立公園の父」と呼ばれるさぬき市生まれの小西和について、前回前々回の記事ではさぬき市で開催中の企画展をご紹介しました。

今年8月には高松市「やしまーる」で「瀬戸内海国立公園の父 小西和」と題したイベントも開催。

小西和と瀬戸内海との関わりを中心としたパネル展のほか、小西和について研究している方を交えてのトークイベントも行われました。

とくにトークイベントでは「瀬戸内海論」をいろんな方向から読み解く楽しさを知ることができました!

その様子をご紹介します。


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2024年8月17日(土)、高松市内の観光地である屋島山上にやってきました。

お盆休み中ということもあり県外客の方がたくさん来られて、西側にある「れいがん茶屋」周辺ではみなさん瀬戸内海を見下ろす絶景や瓦投げを楽しんでいました。

その反対側にあるのが、高松市屋島山上交流拠点施設「やしまーる」。

展望スペース・展示スペース・カフェ・ホールなどを持つ複合施設で、月に何度か地元の出店者が集うマルシェも開催されており、人気のスポットです。

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ここで8月14日〜17日の間、開催されていたのが「瀬戸内海国立公園の父 小西和」のパネル展とトークイベント。

今年90周年を迎えた瀬戸内海国立公園。

瀬戸内海を国立公園にするべく尽力した小西和の著書、「瀬戸内海論」には『屋島から見た瀬戸内海の景色が素晴らしい』と、獅子の霊巌からの風景画が掲載されていますが、まさにその景色を眺める場所での展示となりました。

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『瀬戸内海論』の展示のほか、小西和の生涯がわかるパネルなどが通路沿いに展示されていたので、知らずに訪れた方も興味津々に眺めていました。

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この日はゲストを迎えてのトークイベントも開催されました。

「やしまーる」のイベントホールは通路からも立ち見できるオープン雰囲気だったので、通りすがりに聞いていく方も。

心地よい自然光の差し込むホールで、じっくりと楽しんできました。

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まずはさぬき市生涯学習課の山本一伸さんより、小西和についてのご紹介がありました。

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1873年、さぬき市長尾名に生まれた小西和。

当時の名前は「和太郎」、23歳で「和(かなう)」に改名されたそう。

そんな小西和の瀬戸内海との関わりは大きく分けて2つあります。


まず1つめは「瀬戸内海論」を刊行したこと。

1903年に東京朝日新聞社に勤め始めた小西和は、日露戦争時に従軍記者として満州へ出向きます。

その帰国後1年間の休暇と賞与を受け取り、それを利用して瀬戸内海の学術調査をスタート。

32歳から38歳にかけて取り組んだのがこの冊子です。


そしてもう1つは、日本で唯一、「海の国立公園化」に貢献したこと。

富士山と同じくらい瀬戸内海も国をあげて大切にしていくべき、と提案した小西和。

当時は海を国立公園にするという発想はなく、新聞掲載を通じて「海も検討してほしい」と申し入れたことから、瀬戸内海が候補地に入ることに。

小西和は国会に打診を続け、昭和6年の国立公園法制定に続き、昭和9年に瀬戸内海が雲仙・霧島とともに国立公園第1号に指定されたという経緯があります。

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そして「やしまーる」と小西和にはこんなつながりが。

(さぬき市生涯学習課 山本一伸さん)

『瀬戸内海論』では、獅子の霊巌から西側を見た景色を小西自身が描き、それが瀬戸内海として紹介されました。

 直島、女木島、男木島などが一望できる多島海風景が国立公園になったポイント。

 やしまーるから見えるこの景色は瀬戸内海を象徴する景色だと小西和も思っていたのではないでしょうか?」

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(写真:獅子の霊巌から西側の眺め)

「やしまーる」から見えるこの景色が小西和を奮い立たせたのだと思うと、見慣れたこの風景もより偉大に感じられました!

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続いて小西和研究科の大学院生 北瑞季さんによる「『瀬戸内海論』の概要紹介『小西和と『瀬戸内海論』(1911)」の講演会が行われました。

北さんは大学では英文専攻でしたが、西田正憲さんの著書『瀬戸内海の発見』で『瀬戸内海論』のことを知ったそう。

その後『瀬戸内海論』をいろんな英文学目線で読み解き、卒業論文にするまでに至りました。

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『瀬戸内海論』は瀬戸内海を学術的な観点で研究した辞典のようなもの。

中には世界中のスポットと瀬戸内海を比較している章があり、北さんはそこに注目。

Lake George(ジョージ湖)と瀬戸内海の比較部分を取り上げ、小西和と海外からの景趣の違いに着目しました。

明治44年に発刊された『瀬戸内海論』ですが、瀬戸内海の景観を英語で表現するには言葉だけでなくコミュニケーションを含むフォローが必要だったのかな、と思う景趣の言語化の難しさを感じました。

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最後は山本さん、北さん、そして「やしまーる」の館長 中條亜希子さんを交えての意見交換会も開催されました。

実は中條さんも瀬戸内海に面した兵庫県西宮のご出身。

そんなみなさんの『瀬戸内海論』とは??

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(小西和研究科 北瑞季さん)

「地元の神戸では山から瀬戸内海を眺めたことがありませんでした。

 屋島に来て『こんな見え方があるんだ!』と思いましたね。」

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(やしまーる館長 中條亜希子さん)

「西宮も瀬戸内海に面していますが、ここに来てから地元から見る海の風景の印象が違うことに驚きました。

 小西和はこの景色に感動されたとのことですが、瀬戸内海が国立公園第1号になったのもよくわかります。」

(さぬき市生涯学習課 山本一伸さん)

「私もここでイベントをやりたいと思ったのは、ここから見える西側の景色が心にスッと入るものだったというのもあります。」

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途中、来場されていた「香川大学瀬戸内圏研究センター」センター長の多田さんもトークイベントに飛び入り参加!

(香川大学瀬戸内圏研究センター長 多田さん)

「海洋学・水産学専門の目線で『瀬戸内海論』を読んで驚いたのは、明治の時代にこれだけのことを調べあげて記述していた人がいたということ。

 小西和さんはすごくおもしろい人だと思う。

 これを機に多くの人に瀬戸内海が愛され、小西和さんのことを知ってもらえたらと思います。」

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そんな多田さんの呼びかけで、さぬき市生涯学習課の山本さんが書いたという小西和の伝記「瀬戸内海国立公園の父 小西和」も今年の夏にできあがりました!

現在Amazonで発売中ですので、じっくりと小西和について知りたくなったら購入してみてくださいね♪

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長い年月の中で、あまりにも身近すぎてその良さを振り返ることがなかった瀬戸内海。

多方面・他ジャンルから読み解くことでまだまだ新しい発見ができると感じたイベントでした。

この機会にあなたの興味のある分野から瀬戸内海を見つめてみませんか?


今年は瀬戸内海国立公園指定90周年!

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いまだけのイベントや企画展もたくさん開催されていますので、お見逃しなく!






瀬戸内海国立公園指定90周年記念「瀬戸内海国立公園の父 小西和」※終了
開催日時/2024年8月14日(水)〜8月18日(日)
場所/高松市屋島山上交流拠点施設やしまーる
観覧料/無料
お問い合わせ先/0879-26-9974(さぬき市生涯学習課)



posted by sanuki-asobinin at 10:20| 香川 ☔| Comment(0) | 歴史・文化財 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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