2024年10月07日

いよいよ開館!「細川林谷記念館」の見どころをご紹介!@寒川

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10月6日(日)、寒川町に新しい文化施設「細川林谷記念館」がオープンしました!

さぬき市寒川町出身、江戸で1、2を争う篆刻家として活躍した細川林谷(ほそかわ・りんこく)。

「篆刻(てんこく)」とは、木や石に文字を彫って印にしたもの。

そのちいさなスペースの中で林谷は一体どんな世界を表現したのでしょうか?

また、そのお人柄とは?

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開館前日の10月5日(土)には開館記念式典や展示解説、地元の子どもたちに向けた「篆刻教室」も開催されました。

その様子をご紹介します!



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『細川林谷』は、江戸時代後期の天明2(1782)年さぬき市寒川町生まれの篆刻家。

幼少より篆刻(木や石等に印を彫ること)・絵画・漢詩を学んだ後、長崎・京都でも学び、江戸に出てからその篆刻は天下一と称えられました。

”旅する文人”としてもおなじみで、生涯好んで旅をした時の日本の風景を漢詩と共に描写しています。

地元さぬき市ではあまり名前が知られていない林谷ですが、寒川町では有志の方々や寒川町文化財保護協会の皆さんが顕彰活動を長く行っており、「21世紀間さんがわ」で企画展を行うなど、より多くの方に林谷のことを知ってもらおうと働きかけが続いていました。

そんな中、令和2年に林谷のお兄さんのご子孫にあたる日合通信電線株式会社会長の細川勝博さんと社長の細川周作さんより、『林谷を顕彰するとともに、さぬき市民の芸術文化の振興拠点となる場所を作ってほしい』と寄付を受けたことから、さぬき市寒川庁舎のすぐ西側に「細川林谷記念館」が誕生しました。


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出来上がったばかりの「細川林谷記念館」にやってきました。

アプローチには林谷自身が好んだという竹と石があしらわれており、自然の中で漢詩を読むのを楽しんだ彼の目線を体験できます。

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建物は白と黒でまとめたシックな色合いの平家建て。

中には林谷の作品を展示した「林谷展示室」と一般の方も展覧会などで利用できる「市民ギャラリー」、ワークショップなどができる「講座室」があります。

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開館日は2024年10月6日(日)ですが、前日の10月5日(土)には同施設の講座室にて開館記念式典が行われました。

この施設ができるきっかけとなった日合通信電線株式会社会長の細川勝博さんも三重県から出席されており、そんな細川さんへ感謝状贈呈も行われました。

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式典ののちには細川林谷研究家で高松市立香東中学校教員の田淵元博さんが展示の見どころをわかりやすく説明してくださいました。

ご案内に続いて自分も記念館へ入ってみました〜!!

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なんと展示室横の壁にも竹が!

そして「林谷展示室」の文字の下には篆刻のポイントが!

ここから林谷ワールドへレッツゴ〜!!

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黒でまとめられた内装の「隣国展示室」は、掛け軸や巻物、画帖(日記帳のようなもの)が映える空間。

林谷の生涯と人柄を知る4つのテーマに分けて作品が展示されています。 

※展示室は撮影禁止ですが、取材のため特別に撮影の許可をいただきました。

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1つめは「四君子(しくんし)と歳寒三友(さいかんさんゆう)」。

『四君子』とは、高志の人になりたいという中国の人たちの思いを植物に喩えたもので、梅・竹・蘭・菊のこと。

「歳寒三友」は中国の人々が厳しい環境の中でも耐える松・竹・梅のように不変の心を持つものとして喩えた言葉。

それに自分を重ねて書いた画を『文人画』と呼び、林谷もそれらを題材にした画を残しています。


大胆な筆使いに濃淡の生きた画はとっても雰囲気があり、この自由で軽快な画風も魅力的。

竹を好んだ林谷が、晩年東京で過ごした家に整えた「萬竹園」という竹林の印を押したものもあります。


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こちらは「梅」。

交流のあった文人と月ヶ瀬梅林を見に行った際のもの。

なにやらたくさん文字が書かれており、篆刻も4つ押されています。

実際には10の漢詩がこの中に書かれているのだとか!


自分の画に漢詩と篆刻を添える。

これこそが文人の嗜みだとわかる作品。

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ちなみに掛け軸に何が書いてあるかは、下にわかりやすい現代語訳の解説があります♪

ひとつずつ読み解いてみましょう!


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2つめのテーマは「探奇の遊歴」。

生涯通して珍しいものを探したい気持ちに駆られて日本中を3回旅した細川林谷。

その旅先で描いた、いわゆるスケッチのような掛け軸を展示しています。


林谷の生きた江戸時代は街道も整備されて一般の人にとっても旅が身近になってきた頃。

とはいえ、移動は徒歩か船。

大変な分、とっておきの風景を見つけたときの喜びはひとしおだったのでは?と、さぬき市生涯学習課の鶴身さん。

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「名井瀑布図自画賛」では掛け軸の縦長い特徴を生かして滝を描いています。

手前に紅い衣を着た人物が見えますが…

実はこれ、林谷が描いた林谷自身!!!

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他の掛け軸もよーく探してみたら…

ここにも紅い衣の林谷を発見ーー!

客観的に旅をしている自分を見てみたかったのかもしれませんが、とってもユニークな一面を垣間見た気がしました♪

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3つめのテーマは「師友の交わり」。

林谷が多くの文人と関わり、その交流を描いた作品が展示されています。

中には旅先で友人のところに居候をした際の様子を描いたものも。

友人たちが思わず泊めてしまうほどに愛されていた人物であることもわかります。

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4つめのテーマは「胸中の丘壑(きゅうがく)」。

林谷自身が自分の大切なものや理想の世界を描いたものを集めています。

ここでは竹と同じように好んでいた「石」を描いていますが、この中国の山のような絵も実は「石」なのだとか。


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中央のガラスケースには巻物や画帖、篆刻が展示されています。

上の写真は篆刻の本体!

さぬき市文化財保護協会寒川支部の細川さんによると、『篆刻では「篆書」という漢字の古い書体を掘りますが、ただ掘るだけではなく、書としての美しさや筆遣いがその印の中に残っていないといけない』とのこと。

この小さなスペースの中に志の高さや技術、全てが注ぎ込まれていることがわかります。

林谷の篆刻は美しいのはもちろん、どことなくやわらかい雰囲気も。

多くの人に愛される人だったことが篆刻から滲み出ているような気もしました。

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これらの展示の中で、さぬき市文化財保護協会寒川支部の細川さんのおすすめは「帰去来印譜(ききょらいのいんぷ)」。

形も大きさも違う印がポンポンと押されています。

こちらは中国の偉大な詩人として知られた陶淵明(トウエンメイ)の作品「帰去来」を篆刻で表現した作品。

林谷自身が心血を注いだ最大の作品と言われ、展示の中でも是非みていただきたいとのこと。

陶淵明の生き方に感動し、さまざまな形の印で表現していますが、そんなことができるのも林谷の才能あってこそ。

ただ作るだけではなく、知識も精神も伴っていないと完成しない。

まさに文人ならではの生き様が見える作品です。

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日常で掛け軸をじっくりと見つめる機会はあまりなく、そもそも敷居が高い世界だと思っていました。

ですが解説を読みつつ眺めれば、林谷のお人柄がだんだんとわかり、掛け軸自体が林谷に見えてくるほど親しみやすく感じました。

まずは篆刻の中にどんなものが描かれているのか、それを見に「細川林谷記念館」へ行ってみませんか?


記念館限定!素敵な林谷グッズも♪

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「細川林谷記念館」では粋なオリジナルグッズも販売中!

竹の画を手拭いの縦長枠に合わせてプリントしたものや、林谷のおなじみの篆刻柄をプリントしたトートバッグやTシャツも!

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手軽なものでは缶バッジやノートもありました!

どれもかわいい〜〜!!

日常に林谷を取り入れてみませんか?


今後の「細川林谷記念館」

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開館記念式典後には講座室で篆刻ワークショップが行われ、地元の寒川小学校5・6年生のみんなが参加しました。

教えてくれたのは東かがわ市で活動している篆刻グループ「めだかの学校」の篆刻家 浅野道男さん。

篆刻や細川林谷について学んだあと、自分の名前の漢字を篆書の辞書で調べて、熱心に刻み込んでいました。

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篆刻用の刀があるのも初めて知りました!

文化芸術に触れる場所であってほしいという思いからできた「細川林谷記念館」。

今後も講座室ではさまざまな体験ができる予定ですのでお楽しみに!

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また、オープン記念として、細川林谷の兄の子孫にあたる細川勝博さんが40代から約40年間にわたって収集した絵画や掛け軸、屏風などの美術品の一部を展示する「細川勝博コレクション展」を現在開催中!

第1期は11月3日まで、第2期は11月9日から12月1日まで。

コレクション展のみの入場は無料です。

できたばかりの市民ギャラリーでの展示を楽しみに、是非足を運んでみてくださいね。



細川林谷記念館(2024年10月6日開館)

場所/香川県さぬき市寒川町石田東甲931

開館時間/9:00〜17:00(入室は閉館の30分前まで)

休館日/毎週月曜・12月29日〜1月3日

入館料/常設展示 一般・大学生300円・高校生以下100円(団体割引あり)・未就学児無料

お問い合わせ先/0879-43ー0655

公式サイト http://ew.sanuki.ne.jp/tenjikan/

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posted by sanuki-asobinin at 17:13| 香川 ☁| Comment(0) | 歴史・文化財 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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