創建1400年を記念して特別御開帳が行われている四国霊場八十六番札所「志度寺」。
5月3日〜6日限定で、ずっと工事中だった鐘楼堂が完成したことを記念して屋根瓦の見学会が開催されています。
足場を組んでいる今しか見ることができない瓦を間近で見られると聞いて、鐘楼堂の見学に早速行ってきました!
350年前からここにあったという鐘楼堂の歴史を感じると共に、後世に残していく瓦の知恵を学ぶことができましたよ🎵
同時に修理前の薬師堂や志度寺のパワースポットもご紹介いただきました。
瓦の世界へ誘う見学会の様子をレポートします!
ゴールデンウィーク後半のスタートとなる5月3日(土)、四国霊場八十六番札所「志度寺」にやってきました。
お天気も良く、参拝者の方はもちろんお遍路さんの姿もたくさん。
特別御開帳が始まって1週間。それに合わせてこの日もさまざまなイベントが行われる予定ですが、まずは一番気になっていた「鐘楼堂・薬師堂見学会」へレッツゴ〜!!!
仁王門入ってすぐ左手にある鐘楼堂。
今回の調査時に発見された棟札には『寛政7年(1795年)上棟』と書かれていました。
約230年前に建てられたということですが…40年前の調査ではその前に保管されていた棟札に『明暦2年』と書かれていたそうなので、実際には約350年前からあったということもわかっています。
以降、1回目の修理の記録が『大正10年』と残されていましたが、本格的に小屋組み、四脚支柱、礎盤、礎石まで分解し復元したのは今回が初めてなのだそうです。
昨年(2024年)7月から修理工事が始まって、今年4月末に完成したばかりの鐘楼堂。
もう足場を外しても良いのですが、その前にせっかくならばなかなか下からは見ることができない屋根瓦を間近で見てもらおう!と、工事関係者の方が見学会を企画されました。
納経所で受付をしたのち、いよいよ現地へ。
工事ネットの間をすり抜けて足場の階段を登ります。
屋根の上に到着!かなりの高さです!!
綺麗な屋根瓦にうっとり…
修繕前はかなり劣化し、雨漏れによる木材の腐食や隅木の劣化でかなり危険な状態だったそう。
それを、土を使用しない乾式工法で新たに瓦を葺き直して、下地に防水・遮熱シートを敷き詰めることで屋根を軽くし、防水性を高めたのだそう。
それによってさらに長く先の世代まで重要文化財としての保存ができるようになりました。
ここで工事の方からじっくりと屋根瓦をご案内いただきました。
まずてっぺんの鯱鉾。実は阿吽の対になっており、雄雌ということもあって表情がちょっとずつ違うそう。
眉毛が立派な鯱鉾と、優しげな表情の鯱鉾。
志度寺が保管していた古いものを見本に、鬼士(鬼瓦を作る職人)さんが丁寧に復元されたものです。
鯱鉾は鯉から龍に変わる中間の顔をしているそうで、ナマズっぽい顔つきなのが特徴。
下棟の鬼瓦も阿吽の対になっていました!!
口を開けた鬼と閉じたもの。
この修繕のために新しく作られた鬼瓦もありますが、古い鬼瓦を補修して窯で焼き直ししたものも。
特にツノの部分は鳥が留まることが多くて弱りやすいもの。
なのでツノだけ付け加えて焼き直しすることもあり、その場合はツノがツルツルになっています。
こちらは『切裏甲(きりうらごう)』。欅の新材を使用しています。
瓦に沿って綺麗なカーブを描いていますが、瓦をあてがって線を引いてからのみで削るためぴったりフィット!
この辺りの木の格子は大正時代からあるものです。
一つだけ古い瓦を利用している鬼瓦があるよ、と案内してくださったのは南東隅の鬼瓦。
江戸時代のものでは?と考えられるこの瓦も一度焼き直しされて使用されています。
しゃがんで見てみると口の中に舌があるのがわかるそうで…
あ!!ほんとに舌がある〜〜!!
鬼瓦に舌があるのは初めて見ましたが、工事の方も初めて出会ったそう。
顔つきも古風で、職人さんの『手』による仕事の跡がくっきりと見えます。
新しい鬼瓦は現代の鬼士さんが綺麗に作るのでツルツルしていますが、昔のものは一つずつ手作りなのでごつごつした手作り感が出ていてとっても味があります。
そんな違いが鬼瓦で楽しめるなんて初体験!
瓦の中にも新しい瓦と焼き直した瓦があり、色合いが全然違うのが一目瞭然。現代の瓦はガス釜で一定の高温で焼き上がるのに対し、江戸時代の瓦は薪で炊いていたため温度にばらつきがあり、そのため耐久性も現在のものに比べると弱くなります。
焼きムラがあるもの、叩いて低音のするものは一度テストして使えるかどうかを確かめてから屋根に乗せていくのだとか。
また、今回の修繕工事で古い瓦を1割ほど残さなくてはいけないため、南側にあたる古い瓦ゾーンだけは昔からの『土葺き工法(下に杉の板を何枚か敷いて土の下手を敷き瓦を乗せる)』で昔の瓦を葺いています。
その理由は、50年後・100年後に屋根を修繕するときに江戸時代からの工法を残すため。
屋根の下にも修繕の箇所が。先が雨に叩かれて劣化するので銅板を巻いて保護。
それだけでなく銅に飾りを叩き出していますがそれも美しい。
新しくなった鐘楼堂。年末には除夜の鐘がつけるかな?
欅で作られた柱も角が雨風でだいぶ削られて丸くなっていました。それを復元するために欅の板で保護しています。
鐘楼堂に使われている木材は欅・檜・松で、鐘楼堂の軒先の地垂木(じだるき)・飛檐垂木(ひえんだるき)を見ると新材と古材の違いが色でよくわかります。
特に檜の新材は白いため、大工さんが柿渋を塗って薄めの色合いに仕上げています。
それもだんだんと焦げて味わいが出てくるそう。
今回の見学会では修繕で使用した檜材の端材で作ったというコースターをお土産にいただきました。
「志度寺」の焼印入り! 檜なのでとってもいい香りで癒されます〜!
続いて薬師堂の見学へ!引き続き、これから修繕が始まる薬師堂の見学もさせていただきました。
仁王門からまっすぐ歩いた突き当たりのところにあるのが薬師堂。
ですが、今は布で覆われていてその外観は全く見えなくなっています。
中のお薬師さんは本堂へ移動中で、現在開催中の御開帳でお会いすることができます。
去年の夏に天井が3分の2ほど落ちてしまったという薬師堂。瓦から歴史を感じます。
瓦を剥いたら出てきたという古い板には当時お金を納めたからのお名前と額面が記載されていました!
お金だけでなく、お酢を納めたかたもいらっしゃったよう。
薬師堂のこれが面白いよ、と見せていただいたのがこちらの瓦。
なんと浦島太郎です!!!
カメの背に乗り玉手箱を持っている男性。これがおそらく浦島太郎。周りには松や鳩もいて、珍しい瓦だとお話ししてくださいました。
手はグーの形。これはおそらく釣竿をもっていたのでは?
こちらは子ども?と思いましたが、太郎の奥さんかも?という話で盛り上がりました。
浦島太郎が竜宮城から帰ってきたときには月日が経って自分の奥さんがおばあちゃんになっていた…という話が浮かんできます。
屋根の下には龍の彫刻がありました。真ん中には龍の体が交差する様子。
両端を見ると顔や尾がありました。こちらも面白い構図!
こういった建物の中の遊びはご住職と職人さんの相談の上で作られていくそう。
薬師堂といえばこれ!と見せていただいたのが屋根の最高部にある瓦。
模様が描かれていますが、、、
志度寺の由来とも言われる「志度寺縁起」に描かれた『海女の玉取縁起』の様子を横長の瓦で表現していました!
波の合間から顔を出す海女の姿や、
珠を取られた龍神の姿がくっきりと!これは見応えがあります!
これぞ志度寺ならではの屋根瓦!!
そしてこちらの鬼瓦の表情は鐘楼堂のものよりもちょっと怖かったです。。。
おまけ@:知られざる志度寺のパワースポットへ鐘楼堂・薬師堂と見学が終了し、仁王門へと帰る途中にちょっぴり寄り道しました。大師堂の裏側へと入っていきます。
ここにあるのは幹周り7.5mの大木!!
さぬき市の上がり3か寺の中でも大木といえば長尾寺の大楠を思い出しますが、実は志度寺にもこんな大きな木があったとは初めて知りました。
大きく天に向かって伸びていたこの木、避雷針代わりに雷に打たれた過去があり、上には成長しなくなったのだとか。
しかまだまだ元気に横へと成長し続けています。
立派な幹に手を当てるひと、お賽銭を納める人、幹に抱きつく人。
ここだけは違う空気が流れているような気がしました。
パワーが欲しい!という方はぜひ本堂・大師堂裏の大木を覗いてみてくださいね。
「志度寺縁起絵巻」に描かれた舞さて、見学会が終わって境内を歩いていると、書院へ多くの方が入っていく様子が見受けられました。
気になって行ってみると、5月3日・4日開催の舞楽『蘭陵王』の奉納が行われていました。
これは志度寺に残る伝説『海女の玉取縁起』に描かれた舞楽について独学で探求された十河さんが、自作した面をつけて舞を奉納するというもの。
『海女の玉取縁起』では最後に志度時門前で舞を奉納する様子が描かれています。
それは宝物である珠を海女に取られたことで嘆き悲しむ龍神の心を宥めるためのものだそう。
十河さんが非常にわかりやすくその舞についての話をおしえてくださいました。
自作のお面もユニークな仕上がりでしたよ🎵
まだまだ志度寺では創建1400年を記念した特別御開帳とそれに合わせたイベントが開催されます!
詳しくはこちらをチェック!
↓
志度寺本尊特別御開帳開催期間/2025年4月26日(土)〜5月25日(日)・10月4日(土)〜11月3日(月・祝)
拝観時間/10:00〜16:00
拝観料/700円
お問い合わせ先/087-894-0086
鐘楼堂・薬師堂見学会
開催日時/5月3日(土)〜6日(火) 10:00〜都度開催
場所/志度寺鐘楼堂・薬師堂
料金/1000円